1 訴訟書類の記載の仕方

 訴訟書類は、簡潔な文章で整然かつ明瞭に記載しなければならない(5条)とされています。ものによってはどうしようもないこともありますが、起案するときは肝に銘じておきましょう。

2 各訴訟書類の記載事項

共通の記載事項

 訴状や準備書面等、裁判所に提出する書面には、①当事者の氏名又は名称及び住所、②代理人がいればその氏名と住所、③事件の表示(訴状提出後に事件番号等が割り振られるので、訴状には書けないけど。)、④附属書類の表示、⑤年月日(基本的に裁判所に提出する日)、⑥裁判所の表示(「長崎地方裁判所民事部 御中」とか)を記載し、当事者又は代理人が記名押印する必要があります(2条1項)。
 ただし、当事者や代理人の住所については、一度記載すればそれ以後に提出する書面には記載する必要がありません(同条2項)。そのため、訴状及び答弁書で記載し、準備書面には住所等の記載をしないのが一般的です。

訴状の記載事項

 訴状には、①請求の趣旨、及び②請求を特定するのに必要な事実(請求の原因とされているが、狭義の請求原因等とも呼ばれている。)の記載が必要です。
 また、③請求を理由づける事実(一方、こちらは広義の請求原因とも呼ばれている。基本的には主要事実とか要件事実のこと。)を具体的に記載する必要があるほか、④立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実(いわゆる間接事実)で重要なもの及び証拠を記載しなければなりません(53条1項)。
 さらに、原告又は原告代理人の郵便番号及び電話番号、ファクシミリ番号を記載する必要があるほか(同条4項)、あまりありませんが、訴えの提起前に証拠保全のための証拠調べが行われたときは、当該証拠調べを行った裁判所及び証拠保全事件の表示も記載しなければなりません(54条)。

 訴状で事実についての主張を記載する場合は、できる限り請求を理由づける事実(広義の請求原因)についての主張と当該事実に関連する事実(間接事実)についての主張とを区別して記載しなければなりません(53条2項)。
 なお、訴訟に攻撃又は防御の方法を記載した場合は、準備書面を兼ねるものとされます(同条3項)。

 また、送達を受けるべき場所の届出及び送達受取人の届出(41条1項)も、できる限り訴状に記載してしなければならないとされていますので(41条2項)、訴状に記載してしまう(代理人住所に続けて「(送達場所)」と記載する等)ことがほとんどです。

答弁書の記載事項

 答弁書には、①請求の趣旨に対する答弁、②訴状に記載された事実に対する認否、及び③抗弁事実を具体的に記載する必要があります。また、④立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実(間接事実)で重要なもの及び証拠を記載しなければなりません(80条1項)。
 やむを得ない事由により上記各事項を記載することができない場合には、答弁書の提出後速やかに、これらを記載した準備書面を提出しなければなりません(同項 ただし、実務上は次回期日までに提出されることがほとんど。)。

 また、訴状と同様、被告又は被告代理人の郵便番号及び電話番号、ファクシミリ番号を記載する必要があります(53条3項が準用する53条4項)

 なお、答弁書には53条3項のような準備書面を兼ねるものとする規定がありませんが、これは、答弁書も準備書面の一種と捉えられていることによるものと考えられます(79条1項参照)。

答弁書に対する準備書面(原告側)の記載事項

 答弁書に対する準備書面については、速やかに、①答弁書に記載された事実に対する認否、②具体的な再抗弁事実、及び③立証を要することとなった事由ごとに、当該事実に関連する事実(間接事実)で重要なもの及び証拠を記載しなければなりません(81条前段)。

その他準備書面の記載事項

 答弁書や、答弁書に対する準備書面以外の準備書面については、それほど制約がありませんが、事実についての主張を記載する場合には、できる限り請求を理由づける事実(狭義の請求原因)、抗弁事実又は再抗弁事実についての主張と、これらに関連する事実(間接事実)についての主張とを区別して記載し、立証を要する事由ごとに証拠を記載しなければならないとされています(79条2項、4項)。
 なお、準備書面で文書を引用する場合、裁判所又は相手方から求められた場合、その写しを提出しなければなりません(82条1項)。引用する場合は、写しを手元に残しておきましょう。

 なお、答弁書を含む準備書面において相手方の主張する事実を否認する場合にはその理由を記載しなければならないほか(79条3項)、文書の成立を否認するときは、その理由を明らかにしなければならないとされています(145条 ただし、こちらは「理由を記載しなければならない」とまではしていない。)。

証拠説明書

 証拠説明書については、文書の標目、作成者及び立証趣旨を明らかにする必要があります(137条1項)が、証拠の申出は、証明すべき事実及びこれと証拠との関係を具体的に明示してしなければならない(99条1項)とされているので、立証趣旨として、これらのことを記載する必要があります。

 なお、証拠説明書を提出後、立証趣旨を追加・変更したくなった場合には、再度証拠説明書を提出する方法によるほかないものと思われます。

3 各訴訟書類の添付書類

共通の添付書類

 書証の申出をするときは、その写しと証拠説明書を提出する必要があります(137条1項)。
 また、外国語で作成された文書を提出する場合は、取調べを求める部分についてその文書の訳文を添付しなければなりません(138条1項)

訴状の添付書類

 立証を要する事由について、書証の写しで重要なものを添付する必要があるほか(55条2項)、不動産に関する事件の場合、登記事項証明書を添付しなければなりません(同条1項)。

答弁書の添付書類

 答弁書には、立証を要する事由につき、重要な書証の写しを添付しなければならず、やむを得ない事由により添付することができない場合には、答弁書の提出後速やかに、これを提出しなければならないとされています(80条2項)。

答弁書に対する準備書面の添付書類

 答弁書に対する準備書面については、立証を要することとなった事由につき、重要な証拠の写しを添付しなければなりません(81条後段)

4 そのほか気をつけたいこと

 裁判所に提出した書面のデータについては、裁判所に提供を求められることがあります(3条の2)。準備書面等については、きちんとバージョン管理をしておきましょう。