平成28年海事代理士試験 海商法の解説

注:執筆当時の法令に基づくものです。法改正の影響については各自ご確認ください。

1. 次の文章は、商法の条文である。【  】に入る適切な語句を解答欄に記入せよ。(5点)


(1) 本法ニ於テ船舶トハ商行為ヲ為ス目的ヲ以テ[航海]ノ用ニ供スルモノヲ謂フ

→ 根拠法令は,商法684条1項。
  一応商法上は、船舶の定義が商行為を為す目的をもって航海の用に
 供するものに限定されています。


(2) 船舶ノ賃貸借ハ之ヲ[登記]シタルトキハ爾後其船舶ニ付キ物権ヲ取得シタル者ニ対シテモ其効力ヲ生ス

→ 根拠法令は,商法703条。
  民法上の賃貸借と同様、登記すると第三者に対抗できるようになっ
 ています。


(3)船長ハ傭船者又ハ荷送人ノ請求ニ因リ運送品ノ船積後遅滞ナク一通又ハ数通ノ[船荷証券]ヲ交付スルコトヲ要ス

→ 根拠法令は,商法767条。
 これは、船長側の義務です。  

(4)共同海損又ハ船舶ノ衝突ニ因リテ生シタル債権ハ[1年]ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス

→ 根拠法令は,商法798条1項。
  結構短い1年となっています。
  普通の交通事故なら3年なので、とても短い感じがしますね。


(5) [海上保険契約]ハ航海ニ関スル事故ニ因リテ生スルコトアルヘキ損害ノ填補ヲ以テ其目的トス

→ 根拠法令は,商法815条1項。
  海上保険契約の定義です。ここは覚えるしかないか。


2.法令の規定を参照した次の文章のうち、正しい場合は○を、誤っている場合は×を、解答欄に記入せよ。(5点)


(1) 船舶共有者の間においては,船舶の利用に関する事項は、各船舶共有者の持ち分の価格に従い、その過半数で決める。

答え : ○

→ 根拠法令は,商法693条。
  会社と同じで多数決原理によります。

(693条) 船舶共有者ノ間ニ在リテハ船舶ノ利用ニ関スル事項ハ各共有者ノ持分ノ価格ニ従ヒ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス


(2) 船長は 、船籍港外においては、航海のために必要であっても 、 裁判外の行為を行う権限は有していない。

答え : ☓

→ 根拠法令は,商法713条1項。船籍港内と外で権限の範囲が違うので要注意。

(713条1項) 船籍港外ニ於テハ船長ハ航海ノ為メニ必要ナル一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス


(3) 船舶先取特権は船舶についてのみ認められる。

答え : ☓

→ 根拠法令は,商法842条柱書。
  船舶以外にも、属具や運送賃に対しても行使できます。

(842条) 左ニ掲ケタル債権ヲ有スル者ハ船舶、其属具及ヒ未タ受取ラサル運送賃ノ上ニ先取特権ヲ有ス


(4) 過失により海難を惹起させた場合であっても、救助者は救助料を請求することができる。

答え : ☓

→ 根拠法令は,商法809条1号。
  故意・過失で海難を発生させてしまった救助者は、救助料を請求す
 ることができません。

(809条)左ノ場合ニ於テハ救助者ハ救助料ヲ請求スルコトヲ得ス
一  故意又ハ過失ニ因リテ海難ヲ惹起シタルトキ
二  正当ノ事由ニ因リテ救助ヲ拒マレタルニ拘ハラス強ヒテ之ニ従事シタルトキ
三  救助シタル物品ヲ隠匿シ又ハ濫ニ之ヲ処分シタルトキ


(5 ) 船舶所有者は、発航の当時、当該船舶が安全に航海できることを担保しておかなければならない。

答え : ○

→ 根拠法令は,商法738条。
  ボロボロの船で航海してこい!とは言えません。

(738条) 船舶所有者ハ傭船者又ハ荷送人ニ対シ発航ノ当時船舶カ安全ニ航海ヲ為スニ堪フルコトヲ担保ス

                   以 上