平成28年海事代理士試験 民法の解説

注:執筆当時の法令に基づくものです。法改正の影響については各自ご確認ください。

1.次の文章は、民法の条文である。【  】に入る適切な語句を解答欄に記入せよ。(5点)

(1)未成年者が法律行為をするには、その【法定代理人】の同意を得なければならない。 ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

→ 根拠法令は,民法5条1項(総則)。親権者と書いてしまいそうですが、親権者が全くいないという場合もありますので、法定代理人が正解です。
 ちなみに、親権者がいないときは,未成年後見人がつきます。

(2) 【時効】は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

→ 根拠法令は,民法145条(総則)。
  時効を使うかは本人次第なので、裁判所が勝手に「時効だから本件は終わ
 り」ということはできないということです。

(3) 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって【通常生ずべき】損害の賠償をさせることをその目的とする。

→ 根拠法令は,民法416条1項(債権総論)。
  偶然に偶然が重なって損害が大きくなった場合に、そこまで負担させるのは
 妥当でないからです。

(4) 【組合契約】は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。

→ 根拠法令は,民法667条1項(債権各論)。
  意外と使われている組合契約。弁護士の共同事務所なんかは組合契約かな。

(5) 夫婦の一方が【日常の家事】に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、 これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う 。ただし、第三 者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

→ 根拠法令は,民法761条(親族・相続)。
  たまに出てくる日常家事代理権。「嫁(夫)がしたことなので知りません」
 とは言えません。宝石とか不動産のように、普段買わないようなものであれば
 適用されない可能性もありますけどね。

 2.法令の規定を参照した次の文章のうち、正しい場合は○を、誤っている場合は×を、解答欄に記入せよ。(5点) 
(1) 表意者が相手方と通じてする真意でない意思表示は無効であるため、第三者はその善意・悪意を問わず、当該意思表示の無効を主張できない。

答え : ☓

→ 根拠法令は,民法94条2項(総則)。
  法律行為が無効の場合、普通は誰との関係でも無効なのですが、通謀虚偽表
 示の場合は、善意の第三者を保護するため、相対的にしか無効になりません。

(94条) 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2  前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。 

(2)土地に抵当権が設定された場合、抵当権の効力は、その土地及びその土地の付加一体物に及ぶ。

答え : ○

→ 根拠法令は,民法370条本文(物権)。
  この条文があることで、果物の木などにも抵当権の効果が及びます。

(370条) 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。

 (3)金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償額は、約定利率が法定利率を超えるときは法定利率による。

答え : ☓

→ 根拠法令は,民法419条1項ただし書き(債権総論)。
  約束した方が優先です。ただし、出資法などの他の法令に触れる場合には、
 その部分について無効とされる可能性があります。

(419条) 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

 (4) 賃借人は賃借物を使用収益することができるため、賃貸人の承諾を得ずに賃借物を転貸し収益を得ることができる。

答え : ☓

→ 根拠法令は,民法612条1項(債権各論)。
 賃貸借契約は,信頼関係に基づく継続的な契約なので,勝手に転貸することはできません。借主によって、部屋の使い方ってまったく違いますよね。

(612条)賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
 2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

 (5)ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行につい て第三者に加えた損害について損害賠償責任を負うが、当該使用者が被用者の 選任及びその事業の監督について相当の注意をした場合はこの限りでない。

答え : ○

→ 根拠法令は,民法715条1項ただし書き(債権各論)。
  よく出る使用者責任。典型例は交通事故です。

(715条) ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

所感

根拠法令:条文10・判例0
 うち財産法9・親族法1

 いつもどおり、財産法からの出題が多く,家族法からの出題は,1点しかありませんでした。

 財産法をおさえて、その後余裕があれば家族法の条文をおさえましょう。

 以 上