0 はじめに

 経営学に関する書籍でよく出てくる「SWOT分析」ですが,それぞれの定義等についてまとまっているものがなかったので,備忘録的にまとめておきます。

1 SWOT分析とは

 SWOT分析とは,企業や企業を取り巻く環境(要因)を,S(強み)・W(弱み)・O(機会)・T(脅威)の4つの観点から分類し把握しようとするものです。とてもメジャーな手法なので,よく書籍に出てくるのですが,SWOTの各要素を切り分ける基準についてはどうしたらいいのでしょうか。

2 内部・外部の切り分け

 まず,SWとOTを切り分ける内部・外部の区別基準についてですが,そもそも定義がはっきり記載されていない書籍がほとんどで,定義が書いてある書籍であっても,「自社の内部の状況が内部環境」「自社を取り巻く外部の状況が外部環境」というような,ほとんど同語反復となっているものが少なくありません。

 この点については,内部(組織)要因と外部(環境)要因とで分類している書籍もありますが(三谷宏治 すべての働く人のための新しい経営学 ディスカバー・トゥエンティワン),基準の明確性の観点から,「牧田幸裕 フレームワークを使いこなすための50問 東洋経済新報社」や,「寺島直史ほか スモールM&Aのビジネスデューデリジェンス実務入門 中央経済社」のように,「自社がコントロール可能なものが内部環境(内部要因),コントロール不可能なものが外部環境(外部要因)」という基準で分類するのが適当ではないかと思います(なお,中小企業診断士協会が発行している実務補習テキストにも同様のことが記載されています。)。

3 強みと弱み・機会と脅威の切り分け

 次に,SとW,OとTを切り分ける基準についてですが,こちらも定義がはっきり記載されていない書籍が多く,特に機会や脅威についてはほとんど自明のものとされているようです。

 定義が明確にされているものには,
・プラス(好都合)の要素とマイナス(不都合)の要素で切り分けるもの(久保田進彦ほか はじめてのマーケティング 有斐閣ストゥディア)
・目標(目的)達成にポジティブな要素とネガティブな要素で切り分けるもの(前掲 新しい経営学)
・その市場での成功要因に貢献するかどうか(前掲 フレームワークを使いこなすための50問)
等がありますが,目的や目標によって成功要因や評価(プラス・マイナス)が変動しうることからすれば,「目標達成にプラスなものが強み・機会,マイナスなものが弱み・脅威」という基準で分類するのが適当ではないかと思います。

4 補足:目標が明確でない場合について

 現実のコンサルティングであれば,目標や目的(売上や利益率の向上など)がはっきりしない場合,意思決定者に聞けばいいのですが,中小企業診断士試験のように目標や目的がはっきり書かれていないにもかかわらず,なんとか判断しないといけない場合もあります。この場合,何を目標や目的として切り分けたらいいのでしょうか。

 このあたりは,診断士試験受験中にわりと迷ったところなのですが,近年は「社会や環境にある課題の解決を加味すべきだ」という主張もあるものの,企業の目的に「利益を生み出すこと」が含まれることについては争いがありませんので,とりあえず「利益の拡大」をデフォルトの目標(目的)と考えて処理したところなんとかなりました。ご参考までに。

参考文献