1 相続土地国家帰属法が新しく制定された。
令和3年4月21日に相続土地国家帰属法が可決され,同年4月28日に公布されたことにより,従前,どうしようもなかった不要な土地の処理が可能となる余地が出てきました。
参考: http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00190.html
2 だれが,何をできるようになるの?
法律案の要綱によれば,相続又は相続人に対する遺贈により土地の所有権又は共有持分を取得したものが,これらを国庫に帰属させることができる制度が新設されることとなっています。
3 具体的な手続は?
手続としては,以下のようになるということです。
①相続等により土地の所有権を取得した人が法務大臣に対して承認申請を行う(共有の場合は共有者全員で一緒に承認申請を行う必要あり)
②承認申請に却下事由がある場合は却下
③審査のために必要があれば調査を実施
④不承認事由がなければ承認
⑤申請者が負担金を納付(なお,負担金は10年分の土地管理費相当額)
⑥土地の所有権が国庫に帰属する
4 いつから施行されるの?
この法律は、公布の日(2021年4月28日)から2年以内に試行されることとされています。
5 ちょっと前進?
法律上,所有者は自由に所有物を処分することができるとされており(民法206条),所有者のない不動産は,国庫に帰属する(民法239条2項)とされています。そのため,これを文言通りにとらえると,所有者が不動産の所有権を放棄した場合,無主物となる結果,不動産は国庫に帰属するように読めます。
しかし,不動産の所有権を放棄したとして国に所有権移転登記手続を求めた事件では,所有権放棄が権利濫用等にあたり無効であるから国は所有権を取得していないという理屈で請求が棄却されており(広島高裁松江支部判決 平成28年12月21日 訟務月報64巻6号863頁),いくら不要な不動産であってもその所有権を放棄することはできない状態となっていました。
今回の相続土地国家帰属法の成立によって,入手経路に制限があったり,負担金を納めなければならない等,結構えげつない縛りはあるものの,一定の場合には持て余した土地を国に帰属させることができるようになることとなりました。
前述した状況からは「ちょっと前進したかな」という程度ですが,不要な不動産の処理方法に新たな選択肢が加わりましたので,不要な不動産でお困りの方は,ぜひ同法案の動向をご確認ください。