はじめに

 最近ネタ切れ気味なのでしばらく趣味的な話を。今回お伝えしたいのは、PCを選ぶときはメモリが16GBを超えていて、ストレージがHDDではなくSSDのものを選んで欲しいということです。

PCはもはや弁護士の臓器 

 少し前に、「ケー弁」(携帯電話弁護士の略、携帯電話のみで仕事する弁護士の意)なんて言葉がありましたが、近年はGmailや、LINE、Facebookメッセンジャーなどの連絡ツールが発展したため、もはや携帯電話すら不要で、PC(パーソナルコンピュータ)1台あれば弁護士業務ができる感が出てきました。
 そんな弁護士の必須アイテムであるPCですが、最近は電子書籍や法律書のサブスクリプションサービスの普及及び裁判のIT化等により、その重要性はさらにうなぎのぼりです。キュウソネコカミの「ファントムヴァイブレーション」の中に「スマホはもはや俺の臓器」という歌詞がありましたが、ここまでくるとPCはもはや弁護士の臓器、控えめに言っても身体機能を補完するために必要なものであり、交通事故等で壊れた場合は、メガネやコンタクトレンズと同様に人損として扱われて欲しいところですよね。
 それはさておき、このように弁護士業務におけるPCの役割は大変大きなものとなっていますので、そのスペックにはこだわりたいところです。

まずはメモリにこだわってほしい

 そんなPCのスペックを検討するにあたり、まず重要視していただきたいのがメモリです。エンジニア界隈では「メモリ16GBは人権」と言われるくらいの重要なパーツで、Google ChromeでリサーチをしながらWord(一太郎)又はExcelで文書を作成していくといったような、いろいろなソフト・アプリを同時に使用することが多い弁護士業務においてはボトルネックになりがちなところだからです。

(論点)どのくらいのメモリが必要か

 「弁護士が使用するPCのメモリはどれくらい必要か」という論点については、従前から争いのあるところであり、とりあえずPCが動けばいいんだという最小限説、店頭で販売されているPC程度で十分だという制限説、少なくとも16GB程度は必要であるという極端説、32GB以上が必要であるとする誇張説が鋭く対立しているところです(念のため書いておきますけど、ネタですよ。元ネタは刑法の要素従属性の話。)。

 まず、最小限説についてです。Windows11を動かすために最低限必要なメモリは4GBとされていますが、4GBではOSを動かすのがやっとで、複数のアプリケーションを平行して実行するにはとても足りません。現在、タブを30個くらい開いたGoogle Chromeでこのブログを更新しているのですが、すでに9.6GBのメモリが使用されているので、同じことをメモリ4GBのPCでやると、スラッシングが多発して仕事にならないように思います。
 さきほど「メモリ16GBは人権」というエンジニア界隈の冗談をご紹介しましたが、たしかにスラッシングが多発するPCでの作業を強制されることは、憲法18条後段が禁止する「意に反する苦役」にあたるかもしれませんね(注:繰り返しになりますがネタです。これを根拠として債務不存在確認とか地位の確認請求をしたりすることは、厳にお控えください。)。

 メモリ4GBのPCでの作業を強制されることがどのくらい苦役かについては、以下のサイトをご参照ください。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/1427715.html

 次に、誇張説(32GB以上説)についてですが、以下のサイトでGoogle Chromeで20個のタブでを開いたウインドウ50個を展開するという過酷なテストがおこなわれていますが、それでもメモリ使用量は53GB弱、8K動画製作でさえメモリ使用量が30GB~50GB程度だということなので、よっぽど極端な使い方をしない限り、通常の弁護士業務では32GBのメモリを使い切ることはなさそうです。なので無理して32GB積んでみても「月夜に提灯」となってしまうかもしれません。
 https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/sp/1238017.html

 そこで、残った制限説と極端説についてですが、このごろはやりのウェブブラウザであるGoogle Chromeは、前述のとおりかなり強烈にメモリを使います。開くタブを絞ればもう少しメモリの使用量を減らせるとは思うのですが、最低でもGoogleカレンダー、Gmail、Chatwork、Slack、LIONBOLT、Dropbox、Googlekeepの7つはタブを開いておきたいですし、これに判例検索システムやPDFを追加していくと、あっという間に2ケタのタブが必要になります。
 これだけでも5~6GBのメモリを使用しそうですが、弁護士業務を行ううえでは、さらにWord(一太郎)又はExcel、TeamsやZoomといったアプリを同時に開くことが必要になるので、さらにメモリを使うことになります。

 このように、資料やらなんやらを開きまくる弁護士業務の場合、Google Chromeで資料を見つつWordやExcelで作業をするだけでも、8GBではメモリが不足するという事態が十分生じ得ます。めちゃくちゃ長い書面やもろもろ組み込んだExcelファイルを作るのであればなおさらです。そこで、私としてはメモリは少なくとも16GB程度は必要であるという極端説が妥当であると考えています。

それでも勇気が出ない方のために

 前述のとおり、当該論点については極端説が妥当なのですが、いざPCを購入する際にメモリを16GBにしようとすると、最小限説や制限説に立脚したPCと比較していくらか割高なものに見えてしまいます。そのため、「やっぱり8GBもあれば十分なのでは・・・」と自説を変更したくなってしまうかもしれません。
 しかし、メモリを16GBにするために必要な差額はせいぜい数万円にすぎません。たった数万円で、数年間、弁護士のもっとも貴重な経営資源である「時間」を、PCの処理待ちという全くお金につながらない用途に使うのを減らせる(ついでにイラッとする回数も減らせる)と思えば立派な投資な気がしてきませんか?
 また、以下のサイトのとおり、極端説(16GB説)はあのサイボウズさんも採用している説です。もはや判例通説であるといっても過言ではありませんので、勇気をもって16GB以上にしてください。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2209/14/news119.html

メモリの次はストレージ

 メモリの話が長くなりすぎてしまいましたが、メモリの次にこだわってほしいのが、「SSDかどうか」というところです。以前は安価で大容量なHDDが主流でしたが、HDDは、文字通りハードなディスク(回転している)にデータを読み書きしますので、その構造上、どうしても物理的な移動時間が発生するほか、衝撃等に弱く駆動音がうるさいという弱点があります。
 これに対し、SSDはハードなディスクを回転させたりしませんので、読み書きの速度が圧倒的に早いだけでなく、衝撃に強く、駆動音もしません。以前は容量のわりに高いというデメリットがありましたが、最近はだいぶこなれた価格になってきましたので、多少割高でもぜひSSD搭載のものをご検討ください。特に起動は電源入れてから数分かかっていたころと比べると感動的な速さになります。
 容量については、近年、OneDriveやGoogleドライブといったクラウドサービスや外付けドライブが充実していますので、256GB~512GBくらい、写真や動画を扱うとしても1TBくらいあれば十分なのではないでしょうか。

まとめ

 以上のとおり、もはや弁護士の臓器であるPCには、メモリ16GB・SSD搭載が必要不可欠です。PCを選ぶときはメモリが16GBを超えていて、ストレージがSSDのものを選んでください。
 たぶん続く。

(おまけ)

 今使っているPCのスペックが分からない人は、alt + ctrl +deleteキーを同時押し → タスクマネージャーをクリック → 詳細をクリック → 「パフォーマンス」タブをクリックでおおまかなメモリの量とストレージの種類がわかります。
 なお、ちゃんとメモリを確認したいときは設定→システム→バージョン情報の実装RAM欄を確認してください。

(2023.02.06追記)

 本文において、「PCはもはや弁護士の臓器」ということを書いていましたが、ジョブズ的には「パソコンは脳の自転車」らしいです。弁護士にとってのPCの位置づけも論点となりそうですね。

https://president.jp/articles/-/34876?page=1