1 ネガティブ・オプション(送りつけ商法)とは

 ネガティブ・オプションとは,注文等していない商品を勝手に送り付け,開封等したことにより売買契約が成立したと主張して代金を請求するという商法です。
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/higai/shoho/okuritsuke.html

2 どんなふうになったの?

平成28年改正特商法
(売買契約に基づかないで送付された商品)
第五十九条 販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者(以下この項において「申込者等」という。)以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合又は申込者等に対してその売買契約に係る商品以外の商品につき売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合において、その商品の送付があつた日から起算して十四日を経過する日(その日が、その商品の送付を受けた者が販売業者に対してその商品の引取りの請求をした場合におけるその請求の日から起算して七日を経過する日後であるときは、その七日を経過する日)までに、その商品の送付を受けた者がその申込みにつき承諾をせず、かつ、販売業者がその商品の引取りをしないときは、その送付した商品の返還を請求することができない。
2 前項の規定は、その商品の送付を受けた者のために商行為となる売買契約の申込みについては、適用しない。

このような条文が,以下のように改正され,令和3年7月6日から施行されます。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/amendment/2021/#mh3

令和3年改正特商法
(売買契約に基づかないで送付された商品)
第五十九条 販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者(以下この項において「申込者等」という。)以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合又は申込者等に対してその売買契約に係る商品以外の商品につき売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合には、その送付した商品の返還を請求することができない。
2 前項の規定は、その商品の送付を受けた者が営業のために又は営業として締結することとなる売買契約の申込みについては、適用しない。
第五十九条の二 販売業者は,売買契約の成立を偽ってその売買契約に係る商品を送付した場合には,その送付した商品の返還を請求することができない。

 これまでは,一定期間ではありますが販売業者が商品の返還請求をすることができたために,届いた商品を処分してしまったという点をついて金銭を請求してくるということがあったようです。しかし,当該改正により,販売業者が商品の返還請求することがまったくできなくなりましたので,送りつけられた側は,おくりつけられてきた商品をすぐ廃棄することが可能になりました。
 もちろん,通達にも記載されているとおり,商品を廃棄しても売買契約が成立していないため,代金支払義務が生じることはありません。

3 ところで,なぜネガティブオプション=送りつけ商法なのか?

 このネガティブオプションについて,私が高校生のころは,たしか家庭科の授業で触れられていたのですが,当時,なぜネガティブオプション=送りつけ商法となるのかよくわからなかったんですよね。
 そこで,せっかくなのでこの辺についても調べてみました。

collinsdictionary.comによれば,negative optionとは,
a clause in a sales contract, as for a series of books or records, that provides that merchandise will be sent periodically to the subscriber unless he or she notifies the company in writing that it is not wanted
とされています。契約者が書面でいらないと通知しない限り定期的に商品が送られることを定めた条項ということですね(なお,同サイトにはポジティブオプションの項目はありませんでした。)。そうすると,ネガティブオプション=送りつけ商法とはならない感じがしますね。

 そこで,もう少し検索を続けてみたところ,「Negative option marketing」というワードを発見しました。これの定義について調べると,カナダのマニトバ州のサイトがでてきました。
同サイトによれば,ネガティブオプションマーケティングとは,以下のように定義されています。
Negative option marketing occurs when a supplier, such as a business:
・provides a consumer with goods or services – including an enhancement to a service that the consumer is already receiving – that the consumer did not ask for and;
・requires a consumer to pay for the goods or services unless the consumer informs the supplier that the consumer does not want them.
(https://www.gov.mb.ca/cp/cpo/info/negative_opt.html)

ざっくり和訳すると,ネガティブオプションマーケティングは,企業などが消費者が求めていない商品またはサービス(消費者が既に購入している商品やサービスの増量を含む)を消費者に提供し、かつ消費者が企業に商品やサービスが不要であることを伝えない限り,商品やサービスの代金を支払うよう要求することとなりますので,おそらくこれが語源ですね。

 カタカナ語になる途中で「マーケティング」が落ちてネガティブオプションが「送りつけ商法」ということになったようです。ご参考までに。