法律系の学習というのは、レベルの差はあれ、①どういうルールがあって、➁どういう場面で適用される(あるいは適用されない)のかを学んでいく作業、つまり、当該法令の解像度を上げて使いこなせるようになっていくという作業です。そのため、法律系の学習をする場合、法文を確認できるアイテムというのが必ず必要になります。

 こういう法文を確認できるアイテムとして一番有名なのは、有斐閣から出版されている「六法全書」でしょうか。ドラマなんかでもよく置いてありますよね。しかし、この六法全書、実は実務家で日常的に使用している人はあまり多くありません。弁護士会の相談室や刑事の法廷には設置されているのですが、いかんせん収録されている法令が多すぎて、よく使う民法や民事訴訟法にアクセスしづらいし、なによりデカくて高い(税込1万5620円)のです。※1

 法文集(いわゆる六法)を選ぶときは、まず第一に鮮度が大事なので、一番生きのいい新鮮な(最新年度の)六法を選ぶべきです。憲法のように、ここしばらくまったく改正されていません!という法律を学ぶだけなら先輩のおふるの六法でも大丈夫ですが、民法みたいにどんどん改正されている法律の場合※2、もはや現在の法文が確認できず、ただの鈍器になっている可能性があります。※3

 鮮度の次に大事なのは、サイズでしょうか。デカいと他のテキストやらなんやらに押し出されて持ち運ばなくなるので、持ち運びが予想される場合は小さくて薄いものがおすすめです。ただし、携帯性は、条文の一覧性とトレードオフになります。
 たとえば、ポケット六法(有斐閣)やデイリー六法(三省堂)、判例六法(有斐閣)はB6サイズで比較的薄い※4ので持ち運びに便利なのですが、サイズが小さい分、収録法令が少なかったり、厚みがエグかったりします。一方で、実務家や司法試験受験生が使っていることがある有斐閣判例六法Professionalは、A5(しかも2分冊)なので携帯性は著しく低いのですが、見開きで確認できる条文数や判例は多いです。
 ちなみに、現在はe-GOV法令検索※5で法文をダウンロードすることもできるので、条文数が少ない法令を学習するのであれば、ここからダウンロードして自分が使いやすいようにカスタマイズして印刷するというのもありだと思います。電子データのままにして、どんどん追記していってもいいしね。
 また、○○六法という収録法令をしぼって一覧性と携帯性を両立させているものや、必要な法令を指定したオリジナル六法が作れるサービスもあるので※6、限定された法令だけ載っていればいいのであればこれらを検討する余地もあります。

 あとは判例掲載の有無も大きな要素ですよね。判例が入ってくる分、条文の一覧性は落ちてしまうのですが、いちいち別の書籍等を参照しなくて済むというのはやっぱり便利です。逆に、判例がついていないものしか使っちゃダメという指定があったりもしますので※7、事前に情報を集めておきましょう。よくわからないときは判例なしのものにしておいた方がベターです。どうせ要旨しか書いてないし。

 ほかには、各社で二色刷や網掛けといった工夫がされているのですが、人によってはこういう工夫がかえって邪魔という人もいるので、最終的にはこれらを確認したうえで選ぶのがいいと思います。
 たとえば、デイリー六法はカッコ書きが網かけになっているのですが、会社法のように、法律によっては()がやたら多く、ここを読み飛ばせないといけないような法律もあるので、カッコ書きが網掛けになっている六法は結構アリだと思います。二色刷については、有斐閣判例六法は判例が青字、デイリー六法は条数(第●章とか第●条)や見出しが青字になっています。どっちがいいかは好みですね。

 ちなみに、私は、近年「判例付き法務六法」というものを使用しています。理由は、比較的大判(A5サイズ)かつ文字サイズが小さいので判例付きながらもそれなりの一覧性があるのと、カッコ書きの網掛けがされていて便利だからです(二色刷ではない。)。値段は税込4620円なので、ポケット六法(税込2420円)や判例六法(税込3740円)より少し高いけど、判例六法Professional(税込7040円)とか模範六法(税込7040円)よりは安いという感じです。
 最近はサイトやアプリで法文が確認できるのであまり持ち歩かなくなりましたが、紙の方が電源不要で即時に参照できるので、法律を学習するのであれば、ぜひ1つは紙の六法を持っておくといいですよ。

※1 個人の感想です。
※2 民法は特にガンガン改正されていて、5年前の民法とはもはや別物です。
※3 実務家なら、歴史のある事件がきたとき用に残しておくというのもありですが、学生等の場合はもはや過去の法文は不要でしょう。まとめて捨てようとすると大変なので、こまめにゴミに出しましょう。引越のとき大変だよ。
※4 他の六法と比較すると薄いけど、一般の書籍と比較するとそれなりの厚みがあります。少なくともちょっとした国語辞典くらいはある。
※5 https://laws.e-gov.go.jp/
※6 https://ondemandbook.hourei.co.jp/static/store/sanseido/lp.html
※7 今も変わっていなければ、二回試験はデイリー六法の使用を強制されているはずです。