一般の方はびっくりされるかもしれませんが、日本の刑事裁判では、公刊されている文献の抜粋を証拠調べ請求すると、検察官からは不同意意見(証拠とすることに反対するという意見)が出ますし、がんばって裁判官の判断を求めても、裁判官は証拠として採用しないことがほとんどです。
不同意意見を述べた検察官に理由を聞いてみたこともあるのですが、「この内容なら経験則でいけるのではないか」ということや、「●●という事実はあきらかになっていないのであるから,関連性がない」等と述べられていたので、法律的位置付けとしては、自然的関連性又は法律的関連性がないというご主張なのだと思います。たぶん。
著者や書籍の内容について説明した結果、証拠として採用されたこともありました(※)が、裁判官にお話しをうかがう機会があった際に尋ねてみたところ、「不同意意見が出されたら基本的に文献は証拠として採用しない」という話をされていたので、「まっとうな文献であろうと、検察官に不同意意見を出されると基本的には証拠としてもらえない」というのが日本の刑事裁判制度です。
最近、再審法の改正問題が盛り上がっていますが、捜査機関の検証調書や、被告人のLINEやメール等については容易に証拠として採用される一方で、被告人の主張を裏付ける文献は基本的に証拠として採用されないという現状で、冤罪が生じていないというのはまずありえないと思いますので、ぜひ広く再審を認め、真実を追究できる制度に変えていって欲しいと思います。
※ この際は、裁判所職員総合研修所が監修している『刑事訴訟法講義案』という書籍の「法323条3号にあたる書面としては、信用ある定期刊行物に掲載された市場価格表、スポーツ記録、統計表、家の系図、学術論文などが考えられる。」という記載をもとに、伝聞例外にあたることを主張しました。