はじめに
日弁連の2023年度若手チャレンジ基金制度(先進的な取組等への助成)に応募してみたのですが、通りませんでしたので、今後同制度に応募される際の参考になればと思い、まとめてみました。
若手チャレンジ基金制度とは
若手チャレンジ基金制度は、新65期から72期までの若手会員(修習中の生活費を修習貸与金でまかなうことを余儀なくされた、いわゆる谷間世代。1万1000人くらいいる。)を支援するという名目で設立されたものです。新65期から72期までの若手会員が、①弁護士として行った公益活動等、②研究・学習等、③④先進的な取組等を行った場合に支援金が支給されます。
なお、それぞれの支給額は、①は5万円または10万円、②は上限10万円、③先進的な取組の表彰は30万円以下の副賞、③先進的な取組等の助成は30万円以下とされています。
※参考:貸与金の返済額は毎年約30万円
支給条件はかなりきびしい
これだけ見ると、「谷間世代がなにかがんばっていれば支援金が支給されて貸与金の返済にあてられる支援制度」のように見えるのですが、実際のところ、①公益活動等の対象には、各弁護士会の活動への参加や、国選弁護・民事法律扶助案件の受任等が含まれていないため、これに応募しようと思ったら、会務活動を含む通常の業務以外に、なんらかの特別な活動を行う必要があります(2022年度の支給件数は92件)。
また、②研究・学習等についても、10万円以上の受講費用や学費等の3割(受験料や講座等で指定されている教材以外の書籍購入費や交通費・宿泊費は含まれない)とされているため、10万円以上の講座(満額の支給を受けるためには30万円以上の講座)を受講しなければ支援金は支給されません(2022年度の支給件数は275件。)。
ちなみに、私も中小企業診断士を取得していますが、かかったのは書籍購入費と受験料、福岡までの交通費程度なので、支援金の対象となりません。
さらに、③先進的取組の表彰についても、従前の例からすると、重要な最高裁判決を取得したり、団体の立ち上げをしたり海外に行ったり等がなければ対象とならないようです(2022年度の支給件数は5件)。
このように、「毎年の貸与金の返済がしんどい」とか言っているような、時間やお金に余裕がない谷間世代には縁がなさそうな若手チャレンジ基金制度ですが、唯一④先進的取組への助成については、過去の支給事案が公開されていないため、どのような取組みであれば対象となるかよくわかりません(2022年度の支給件数は6件)が、「若手チャレンジ基金制度のご紹介」という資料によれば、「これからの弁護士業務に役に立つアイテムを発明した(原文ママ)」という程度でも助成される可能性があるような記載があります。
「これからの弁護士業務の役に立つアイテム」とは?
この類型ならあるいは・・・と思い、業務の合間にチマチマ作成したRPAプログラム(Python、GoogleAppScript、VBAで作成したものをそれぞれ1つずつ)で応募してみたのですが、令和6年2月1日付「若手チャレンジ基金制度の審査結果について(通知)」という文書で「貴職の御期待に添いかねる結果となりました。」ということが通知されました。
提出したRPAプログラムは、①PDFデータの文字起こしをするもの、②Excelに入力されたデータから自動的にPDFデータを生成するとともに一定の条件に合致するものだけを印刷するもの③自動的に最終営業日を判定してリマインドメールを送信するものというものでしたが、この程度では「これからの弁護士業務の役に立つアイテム」と評価してもらえないようです。
2023年9月に開発した「mints出す前に」は、複数の機能を統合したもう少し高度なプログラムなのですが、2023年度若手チャレンジ基金制度の対象となる活動期間(2022年10月1日~2023年9月30日(先進的取組については8月31日まで))後の取組みでしたので、2024年度に応募してみようと思います。
どの程度のプログラムを作ったら「これからの弁護士業務に役立つアイテムを発明した」と評価してもらえるのかはまだわかりませんが、これだけ支給のハードルが高いと、日弁連的には「谷間世代は会務なんてやってないでもっと時間と金をかけて特別な活動をせよ」と推奨しているように見えてしまうので、基準の変更などがありうるのであれば、会務等をもっと評価してくれたらなと思います。
https://www.nichibenren.or.jp/document/newspaper/year/2023/592