1 はじめに
和解が成立してほっとしていると,裁判官から「口頭で送達申請されますか」と聞かれて適当に「はい」と答えたり,内心焦ったりしていませんか?
今回は,和解成立後に聞かれる口頭の送達申請をするかどうかの判断基準について解説します。
2 なんで送達申請するか聞かれるの?
判決が出た場合は,民事訴訟法255条1項により勝手に当事者に送達されるのですが,和解の場合には,それを記載した調書の送達に関する条文がありませんので,裁判所が勝手に送達してくれるということはありません。
この「自動的に送達されない」という事情が意味を持つのは,和解により定められた内容が任意に履行されない場合です。
この場合、和解は調書に記載されると確定判決と同一の効力を有するので (同法第267条),強制執行の手続に進むわけですが,強制執行をする際には,債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されている必要があります(民事執行法29条前段)。
したがって,送達がなされていない場合,この段階であらためて送達申請を行わなければならないこととなります。
また,実際問題として,送達申請をしていないと,和解の内容を記載した調書が相手方に送られないわけですから,特に相手方が本人訴訟の場合,相手方が和解の詳細を確認できず,無用なトラブル(支払期日や金額の間違いなど)の発生原因ともなりかねません。
逆に,和解の席上で現金が交付された場合など,和解の内容を確認する必要がなく,かつ,こちらで強制執行の申立をする可能性がないという場合(このような場合,もはや送達申請するかどうか聞かれないような気もしますが)には,あえて送達をする意味がないので,送達申請をする必要がないということになります。
3 まとめ
というわけで,よっぽどのことがない限り,聞かれたら口頭で送達申請をしておくことをおすすめします。
※ただ,今回調査をしていたところ,どうして口頭で送達申請ができるのかについてはよくわかりませんでした。民事訴訟規則だと,訴訟記録である和解調書の閲覧等の請求は書面でしなければならないような(同33条の2第1項)・・・。これがあるから,規則1条1項は使えないよね・・・?