法律事務所は規模の経済を活かせるのか?
1 規模の経済とは
規模の経済性とは,企業の規模や生産量が増大するに従い,平均費用(製品1個あたりの生産コスト)が逓減していく現象をいい,生産量が増大して,生産物1個あたりの費用(平均費用)が安くなるとき,「規模の経済が働く」という言い方をします。
2 費用の分類
そして,費用は,固定費と変動費に分類されます。これらは,生産量の増減に伴って変動するかどうかによって分類され,生産量の増減に伴って変動するものが変動費,変動しないものが固定費です。
たとえば,私が店舗でりんごを売っているとした場合,店舗の家賃は売上や生産量に関わらず発生するものなので固定費,りんごの仕入れ代は売上や生産量の増減に伴って変動するので変動費になります。
3 どういう場合に働きやすいのか?
これらの定義からすれば,生産量が増大するほど固定費が分散されていき,平均費用が変動費に近づいていくことになりますので,変動費が高い場合には,平均費用がそれほど下がりません。つまり,規模の経済が働きにくくなります。
これに対し,変動費が低い場合には,生産量が増大するほど平均費用が変動費に近づいていき,どんどん平均費用が下がっていきます。つまり,規模の経済が働きやすいことになります。
また,固定費が低い場合には,生産物1個あたりの固定費がもともと高くないため,規模の経済が働きにくくなります。逆に,固定費が高い場合には,生産量が増えるほど生産物1個あたりの固定費がどんどん下がりますので,規模の経済が働きやすくなります。
したがって,固定費が高く,かつ変動費が低いという場合に,もっとも規模の経済が働きやすくなります。
固定費 高い 低い
変動費
高い 働きにくい とても働きにくい
低い とても働きやすい 働きにくい
4 具体例で考える
(1)変動費が高い場合
具体例で考えてみましょう。ここに,固定費が100円,生産量1単位あたりの変動費が80円の企業があったとします。この企業が,10単位の生産活動を行った場合の平均費用は,(100+80×10)÷10で90円です。次に,この企業が倍の20単位の生産を行った場合についてみると,平均費用は,(100+80×20)÷20で85円になります。
このケースでは,生産量が倍になっていますが,平均費用は5円しか下がっていません。また,変動費が80円なので,さらに生産量を増加したとしても,今後それほど平均費用は下がりません。
(2)固定費が高い場合
次に,固定費が1000円,生産量1単位あたりの変動費が5円の企業について検討してみましょう。この企業が,10単位の生産活動を行った場合の平均費用は,(1000+5×10)÷10で105円です。次に,この企業が倍の20単位の生産を行った場合についてみると,平均費用は,(1000+5×20)÷20で55円になります。
このケースでは,生産量が倍になったことで,平均費用が半分近くになりました。また,変動費はわずか5円ですので,さらに生産量を増やせば,どんどん平均費用が下がっていきます。
(3)まとめ
このように,固定費が高く,変動費が低い場合の方が,規模の経済が働きやすくなります。
つづく