法律事務所の変動費と固定費
1 前回のおさらい
前回の記事では、固定費が高く、変動費が低い場合の方が規模の経済が働きやすくなることを確認しました。
参照:法律事務所は規模の経済を活かせるか?~1 規模の経済とは~(H30.6.1更新) – 岬研究室
2 法律事務所の経費の構造
では、法律事務所は規模の経済が働きやすい事業なのでしょうか?
基本的に、法律事務所の経費(家賃・交際費・水光熱費・・・etc)は、ほとんどすべてが売上と比例しない固定費です。
提供するものが法律サービスなので、製品のもとになる素材といえば、紙くらいなものですし、これも売上(着手金・報酬金)と比例して増えるわけではありません。どの事件でも同じくらいかかります。
唯一、変動費になるものがあるとすれば、アソシエイト弁護士(いそ弁)を雇用している場合で、かつ、その報酬について割合で決定している場合です。
例えば、個人事件については、事務所が30%、アソシエイト弁護士が70%などと取り決めている事務所の場合、事務所経営側からすれば、アソシエイト弁護士に支払う70%分が売上に比例して増減する変動費になります。一方で、アソシエイト弁護士側からすれば、事務所側に渡す30%が変動費になります。
3 結局どうなの?
以上のとおり、法律事務所の経費の構造からすれば、個人事件について割合で報酬を分配していない限り、法律事務所の経費はほぼ固定費であり、変動費が殆ど無い事業ということになります。
なので、基本的には、規模の経済が働きやすい構造であるといえます。
ただし、次回以降で述べるとおり、法律事務所が生産量を増大させるためには、様々なボトルネックを解消しなければならないため、法律事務所が規模の経済を活かすには結構な工夫が必要だと考えています。