1 はじめに

・「弁護士なのにバッジはどうした!」と言われたときの対応
・他士業の人のバッジはあんまり見ないけど,どうして弁護士だけ裏返しにしてまでバッジをつけ続けているのか?

 について検討しましたので,ご報告いたします。

2 バッジに関するルール

 いわゆる弁護士バッジは,正確には「弁護士記章」というものです。

 この記章に関し,現在の日本弁護士連合会会則第29条2項は,「弁護士は、その職務を行う場合には、本会の制定した記章を携帯しなければならない。ただし、本会の発行した身分証明書の携帯をもってこれに代えることができる。」と規定していますが, 改正前は,「弁護士は、その職務を行う場合には、本会の制定した記章を帯用しなければならない。」と規定していました。
 旧規定の「帯用」 が意味する内容については,あまりはっきりしませんでしたが,「帯びて用いる」という文言からすれば,衣服につけておくという意味だったものと考えられます。

 なので,かつては,弁護士がお仕事をするときは,バッジをつけていなければならなかったので,そのなごりとして,現在でもたまにバッジをつけていないといろいろ言われるという事態が生じているようです。

 しかし,前述のとおり,現在は,記章(バッジ)か,日弁連が発行する身分証明書を携帯していれば大丈夫であって,つけている必要はありません。自信を持って「身分証(ないし記章)を携帯していますので。」と返しましょう。

3 紛失が怖い?

 前述のとおり,別に仕事中であってもバッジをつけている義務はありませんでした。では,なぜ弁護士だけが裏返しにしてまでバッジをつけ続けているのでしょうか?

 このテーマについての明確な答えを見つけることはできませんでしたが,弁護士バッジに関する規則によれば,弁護士記章は,貸与されているだけのもので,いずれ返還しなければならないとされています(弁護士記章規則2条,5条)。
 また,貸与物なので,紛失した場合には,日弁連に対し紛失した事情を記載した紛失届を提出するとともに,再交付申請を行わなければなりません(同7条)。紛失届をした場合,弁護士名簿に記載・記録され,かつ原則として弁護士の費用で官報に公告がなされるなど(同8条),わりとおおごとになります。しかも再交付されたバッジは,裏にある文字も入れられてしまうというおまけつきで。

 たまたま拾われて警察に届けられていたり,フリマアプリとかに出品されていればすぐに見つけられるかもしれませんが,このように,バッジを紛失するといろいろと面倒なことになるわけです。
 そうすると,外でバッジを外してどこかにしまうというのはわりとリスキーなので,見つけやすいジャケットにつけたままにしておくというのはわりと合理的な行動なのかもしれません。

 ただ,紛失が怖いのであれば,「必要なとき以外は事務所などの安全な場所に保管しておけばいいのに」とは思います。

4 まとめ

・ 現在は仕事中であってもバッジは着用していなくていい。
 (ただし,身分証明書かバッジを携帯していなくてはならない。)

・ ずっとバッジをつけているのは,多分なくすのが怖いから。