1 養育費算定表が改訂された

 本日,改訂養育費・婚姻費用算定表(正式名称は標準算定方式・算定表でしたっけ)が公表されました。リンクは以下のとおり。

  http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

2 養育費等の増額が目につくが・・・

 新聞等のマスメディアでは,養育費等が増額されていることが大きく報じられていますが,実務家的には,「これまでのやつどうすんの?」っていうところが気になります。

 そこで,「養育費算定表の改訂は,これまでの取決めに影響しないかどうか」について調べてみました。

3 すぐに見つかった

 さっそく調べようとしたところ,すぐ見つかりました。改訂養育費・婚姻費用算定表と同じページに置いてある,「研究報告の概要」というやつです。これの8によれば,

 ①本研究の発表は,養育費等の額を変更すべき事情変更には該当しない。

 → 改訂養育費・婚姻費用算定表が公開されたことを根拠として,養育費等の額を変更(増額)してほしいという申立てをしてもダメ。

 ②客観的事情の変更があるなど,すでに定めた養育費等を変更すべき場合の養育費等の算定にあたっては,本研究の提案した改定標準算定方式・算定表を用いることが期待される。

 → ほかに変更する事情があるのであれば,改訂養育費・婚姻費用算定表によって算定する。

 とされています。なので,まずはほかの「客観的事情の変更」の有無を確認すべきであり,改訂養育費・婚姻費用算定表が発表されたことだけを根拠として変更申立てをしても認められないのでやめておいた方がいいでしょう。

4 結論

  基本的に,養育費算定表の改訂はこれまでの取決めには影響しない。

 変更の申立てを考えている場合には,「客観的事情の変更」があるかどうかを検討したうえで行いましょう。

5 補足:改正法による影響

 ちなみに,上記書類には,民法改正に関する影響についても記載がありましたので,こちらについても書いておきます。

 ①改正法の成立または施行前に養育費の終期として「成年」に達する日までなどと定められた協議書等における「成年」の意義は,基本的に20歳と解するのが相当(注:改正法とは,成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」のことを指すものと考えられる。なお,2022年4月1日施行)

 → とりあえず「成年」までという記載をした場合は,基本的に20歳まで。

 ②改正法の成立または施行自体は,(中略)すでに合意や裁判により満20歳に達する日までなどと定められた養育費の支払い義務の終期を18歳に変更すべき事由にはならない。

 → 改正法の成立や施行を根拠として支払い義務がおわる時期の変更の申し立てをしても蹴られる。

 ③養育費の支払い義務の終期未成熟子を脱する時期であって,個別の事案に応じて認定判断される。未成熟子を脱する時期が特定されない事案については,未成熟子を脱するのは20歳となる時点とされ,その時点が養育費の支払い義務の終期と判断されることになると考える。

 → 基本的に養育費の支払い義務が終わるのは,こどもが20歳になったときでかわらない。

 ④婚姻費用についても,子が18歳に達したことが直ちに婚姻費用の減額事由に該当するとはいえない。

 → こどもが18歳になったので婚姻費用を減額してくれといってもダメ。

 というわけで,実務的には「養育費は20歳まで」というのは変わらなさそうです。