法定相続情報証明制度の限界を探る。

1 法定相続情報証明制度

平成29年5月29日から運用が開始された法定相続情報証明制度。さっそく使ってみようと思い、遺産分割請求事件と相続財産管理人の事件で申出をしてみたところ、「相続財産管理人については、出せるかわからないので、上級官庁に問い合わせる」という回答が返ってきた。

 相続人が生きていれば使えたのに、相続人が死んでしまうと法定相続情報証明制度が使えないということになるとなんだかアンバランスな気が・・・。せっかくなので、回答が来る前に、条文上はどうなるのか検討してみることにした。

2 法定相続情報証明制度の条文上の根拠は?

法定相続情報証明制度の根拠法令は、不動産登記規則の模様。なんか意見を募集していたような気もしましたが、結局、法律じゃなくて、規則にしか根拠がないんですね。

 (R1.7.9確認)e-Govちゃんに反映されていました。不動産登記規則に第6章として法定相続情報(247条・248条)が追加されており、これらに基づいて法定相続情報証明(正式名称は「法定相続情報一覧図」)の交付を請求することができる。
 そして、同規則247条によれば、請求をすることができるのは、「相続人又は相続人の地位を相続により承継した者」とされている。

第六章 法定相続情報
(法定相続情報一覧図)
第二百四十七条 表題部所有者、登記名義人又はその他の者について相続が開始した場合において、当該相続に起因する登記その他の手続のために必要があるときは、その相続人(中略)又は当該相続人の地位を相続により承継した者は、被相続人の本籍地若しくは最後の住所地、申出人の住所地又は被相続人を表題部所有者若しくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対し、法定相続情報(次の各号に掲げる情報をいう。以下同じ。)を記載した書面(以下「法定相続情報一覧図」という。)の保管及び法定相続情報一覧図の写しの交付の申出をすることができる。
一 被相続人の氏名、生年月日、最後の住所及び死亡の年月日
二 相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄

3 相続財産管理人の地位から考える

 そこで、今度は相続財産管理人の地位についてみると、相続人のあることが明らかでないときに相続財産が法人化し(民法951条)、相続財産管理人は、その地位については争いがあるものの、一般的には、相続財産法人の代表者であると解されているとのこと。

 そうすると、相続財産法人は、被相続人が相続人であった(ややこしいですね。)以上、「相続人の地位を相続により承継した者」にあたり、その代表者たる相続財産管理人は、法定相続情報証明制度を利用できると思うのですが、どうなんでしょうか。

 結果が返ってきたら、またお知らせしたいと思います。

 (H29年7月3日追記)

 法務局より回答があり,相続財産管理人も法定相続情報証明制度を利用できるとのこと。全国でも初めてのケースだったため,回答に時間がかかったらしいです。結構レアケースですからね・・・。

 相続財産管理人が申出をする場合,申出人は「亡○相続財産」(住所は最後の住所地),代理人は「相続財産管理人・弁護士 △」(法定代理人),法定相続情報の作成者は「亡○相続財産管理人(申出人)弁護士△」,にして欲しいとのことです。ご参考までに。

(H29年7月6日追記)

 完成したとのことなので,受け取ってさっそく郵便局へ。証明情報を提出したけど,戸籍等はあるかと聞かれ,結局戸籍類一式のコピーをとられました。
 あれ,せっかく取得したけど,もしかしてこの書類,全く意味がない・・・?

(H29年7月7日追記)

 今度は親和銀行で使用してみましたが,やっぱり戸籍等のコピーをとられました。結局戸籍等を持ち歩かないといけないのか。

(H30年5月31日追記)

最近弁護士同士で話をしていたところ,まだ使ったことがないという話もちらほら。
結局戸籍をすべて集めないといけないので,弁護士業界ではあまり使われていないようです。

以 上