はじめに

 少し前に就職したことがある人であれば、親族などの「身元保証書」の提出を求められたことがあったのではないでしょうか。今回は、債権法改正により減少しつつある?身元保証契約についてご説明します。

1 身元保証契約とは

 提出を求められる書面の名称は会社によって異なりますが(「身元保証書」・「身元引受書」・「身元保証契約書」等)、それらの書面の中に、「被用者(労働者)の行為によって使用者に生じた損害を賠償することを約束する」という内容が含まれていれば、具体的には「XがYとの雇用契約に違反し、又は故意若しくは過失によってYに損害を生じさせたときは、本人と連帯してその損害を賠償する責任を負う。」といったような文言が入っていれば、それは身元保証契約です。

2 どうして身元保証契約を締結するのか

 「被用者(労働者)の行為によって使用者に生じた損害を賠償することを約束」させることから明らかなとおり、労働者が会社に損害を与えた場合の賠償義務を担保するために締結されています。

3 身元保証契約に関連する法律

⑴ 民法

 令和2年4月1日以降に締結される身元保証契約は、「被用者(労働者)の行為によって使用者に生じた損害を賠償」する債務という、「一定の範囲に属する不特定の債務」を主たる債務とする根保証契約で、保証人が法人でないものにあたりますので、個人根保証契約(改正後民法465条の2)に関する規定が適用されます。
 個人根保証契約については、極度額を定めなければその効力を生じない(同条2項)とされているほか、極度額の定めについては416条2項3項が準用されているため(改正後民法465条の2第3項)、極度額を定めて書面等で締結することが求められます

⑵ 身元保証二関スル法律

 また、身元保証契約については、特別法として「身元保証契約に関する法律」が定められています。そのおおまかな内容は以下のとおりですが、重要なのは期間関係のところでしょうか。
・身元保証契約の定義(1条)
身元保証契約の期間を定めなかった場合、その有効期間は成立の日から3年間(商工業見習者の場合は5年)となること(1条)
身元保証契約の期間は5年を超えることができないこと(更新の場合も同様 2条)
・使用者の身元保証人に対する通知義務(3条)
・身元保証人の解除(4条)
・身元保証人の損害賠償の責任及び金額を定める場合の考慮事項(5条)
・同法に違反する特約の処理(6条)

4 今後はどうする?

 具体的な金額(例えば200万円等)を明示すると結構いかつい書面になることや、人手不足ということもあって、民法改正を機に身元保証契約を求めない会社も増えているようですが、なにかあったときには頼りになるかもしれない契約です。引き続き締結する場合は、いざというときに無効と判断されないよう、きちんと書式を見直しておきましょう。