1 はじめに
今回のテーマは,「なにかで困って人に頼むとき,どういう人を選ぶべきか」という問題です。
結論からいうと,もしこれからだれかの助力を得ようとされるのであれば,ぜひ,「断言しない」人を選ぶことをおすすめします。
2 断言してくれる人は頼もしいが
法律相談を受けていると,たまに「絶対こうなるんですか?」「絶対勝てるなら依頼します」みたいなことを言われることがあります。
しかし,弁護士は,事件について,依頼者に有利な結果となることを請け合ったり,保証してはいけないことととなっており(弁護士職務基本規程29条2項),少なくとも依頼者に有利な結果となることを保証することはできません(あんまり意味がないので,依頼者に不利な結果になることを保証する人もいないと思いますが。)。
なので,「勝訴の可能性がどのくらいか」ということをお伝えするくらいにとどまることになりますが,これが結構不評で,上記のようなことをおっしゃる方にお伝えすると,その後いらっしゃらなくなることがほとんどです。
たしかに,法律相談にいらっしゃる段階の方は,とても困っている状況にあるわけですから,いろいろと条件付きで話す専門家よりも,自信たっぷりに「絶対勝てる」と言ってくれる人の方が頼れるように見えてしまうかもしれません。
が,「絶対」「確実」「100%」などという言葉を使う業者等に依頼したとしても,だいたい高い費用をとられるだけで大した成果が出ないケースが多いようです。自信満々だったはずなのに,どうしてこういうことが生じてしまうのでしょうか。
3 ダニングクルーガー効果
ダニングクルーガー効果とは,能力の低い人物が自らの容姿や発言・行動などについて、実際よりも高い評価を行ってしまう優越の錯覚を生み出す認知バイアスです(日本語版Wikipediaより。)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%EF%BC%9D%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%BC%E5%8A%B9%E6%9E%9C
ダニングクルーガー効果で検索していただくとグラフがでてくるかと思いますが,このグラフのとおり,「ちょっとかじった」くらいの人は,優越の錯覚に陥り,自信の度合いがとても高くなりますが,知識や経験が高まってくると,発言が慎重になり,だんだん言い切りをしなくなります。その後,さらに知識や経験が高まると,自信の度合いが回復していく傾向にあるようです。
ということは,「断言してくれる人」は,「ちょっとかじった」くらいの人か,あるいは知識や経験が高まりまくった真の専門家のいずれか,ということになります。
そして,「真の専門家」となっている人はそんなに数がいないでしょうから,自信満々に断言してくれる人のほとんどは「ちょっとかじった」くらいの人の可能性が高いということです。
上記のケースは,この「ちょっとかじった」くらいの人にあたってしまったケースだった,ということですね。
4 結論:断言しない人を選ぼう
以上のように,断言する人は,抜群に優秀な人か,全然だめな人のどちらかである一方で,断言しない人は,少なくともある程度知識がある人です。
とすれば,これからだれかの助力を得ようとするのであれば,あえて「断言しない」人の中から選ぶことをおすすめします。
そして,断言しない人の中では,断言しない理由,たとえば,法律や判例上認められる可能性が低いのか,あるいは証拠上認められる可能性が低いのか等を具体的かつ明確に説明してくれるかどうかを考慮して決めるのがいいのではないでしょうか。
※ちなみに,「弁護士に頼むより安い」とうたってる業者のほとんどが弁護士より高い報酬を取っていたりするので,このような売り込みには特に注意が必要です。
以上