はじめに

 「オンラインストレージにデータを保存しとけばどこでも仕事ができるな」とか考えつつ、「守秘義務とか大丈夫なの?」とかもやもやしていまだ利用できていなかったので、気が向いたところでまとめてみました。

法律事務所では、どれが利用されているの?

 東京弁護士協同組合 法律事務所経営ガイド作成チーム編「50期代・60期代弁護士による新時代の事務所マネジメント」によれば、他の法律事務所では、以下のようなストレージ等が使われているようです。

Google Drive

https://www.google.com/intl/ja_ALL/drive/

 ファイルの中まで全文検索OKというコメントあり。検索性が高いというのはポイントですよね。

 NASとGoogle Driveを同期しているというところもありました。

Box

https://www.box.com/ja-jp/cloud-storage

セキュリティが売りらしい。

Airtable

https://airtable.com/

 英語のサイトなのでとっつきにくそうですが・・・

Dropbox

https://www.dropbox.com/ja/

有名どころ。

アマゾンウェブサービス(AWS)

https://aws.amazon.com/jp/products/storage/

AWSでもストレージが使えるんですね。

サーバーの設置

オンプレミスのサーバーにVPS接続,NAS+VPS,所内Wikipedia等

 セキュリティ上の問題から、オンラインストレージを選択していないという事務所もありました。

OneDrive

https://onedrive.live.com/about/ja-jp/

 Office365を契約すると使えるので、こちらも候補に入れておきたい。裁判所もTeams使うって言うし。

選定にあたって考慮すべき要素は?

考慮要素1 セキュリティの問題
 士業が扱う情報は、とてもセンシティブなものが多いわけですので、第1の考慮要素はセキュリティですよね。中身を見られると守秘義務に違反しちゃいますし。このへんは、「自宅でできる弁護士業務」(http://niben.jp/niben/books/frontier/frontier201610/2016_NO10_23.pdf
も参考にしてください。

考慮要素2 データ保管の継続性
 次に考慮したいのが、「そのストレージ、いつまで使えるの」という点です。
 急にサービスを止めますとか言われると困っちゃいますからね。

考慮要素3 検索性
 過去の事案の書類を探すことも考えると、検索性が高いにこしたことはありません。

あまり考慮しなくてもいいと考えられること
 逆に、士業が扱うデータはそれほど重いものがない(動画とかあんまりない・・・よね?)ので、容量や転送速度についてはそれほど気にしなくてもいいのかなと。

士業事務所で使えそうなもの

1 Box

https://www.box.com/ja-jp/legal/termsofservice

 2020年3月に改訂されていますが,「お客様がアカウントにアップロードし保存するすべての電子文書を「コンテンツ」といいます。お客様がアカウントにアップロードしたすべてのコンテンツはお客様に帰属します。弊社は、お客様又は他の当事者が本サービス上に投稿したコンテンツを管理、検証又は推薦いたしません。」という条項はそのままです。利用者のログも追えるため、セキュリティ面が安心。

 ただ、準拠法はイングランドとウェールズらしいぞ。
 継続性は大きい会社なので大丈夫そう?

2 AWSクラウドストレージ

https://d1.awsstatic.com/legal/aws-customer-agreement/AWS_Customer_Agreement-JP_(2019-04-30).pdf

 データプライバシー条項があり、しっかりしている感じ。

 また、アマゾンなので継続性は大丈夫そう。

3 OneDrive

https://www.microsoft.com/ja-jp/servicesagreement/default.aspx 
 「お客様は、マイクロソフトに対し、本サービスをお客様および他のユーザーに提供するため、お客様および本サービスを保護するため、ならびにマイクロソフトの製品およびサービスを改善するために必要な範囲で、お客様のコンテンツを使用する (たとえば、本サービス上のお客様のコンテンツを複製する、保持する、送信する、再フォーマットする、表示する、コミュニケーション ツールを介して頒布するなど) ための世界全域における知的財産のライセンスを無償で許諾するものとします。」というところが少し気になりますが,この規約は有料のビジネスプランを契約すると適用されなくなるようなので( https://www.
microsoft.com/ja-jp/servicesagreement/faq.aspx )有料なら大丈夫そうです。

 準拠法は日本なのでちょっと安心。

 また、世界のマイクロソフトがやっているので、継続性は多分大丈夫なはず。

4 Google Drive

https://www.google.com/intl/ja_ALL/drive/terms-of-service/

 「Google ドライブに対して、または Google ドライブを介してユーザーがコンテンツをアップロード、提供、保存、送受信すると、ユーザーは Google に対して、そのコンテンツについて、使用、ホスト、保存、複製、変更、派生物の作成(たとえば、Google が行う翻訳、変換、またはユーザーのコンテンツが Google のサービスにおいてよりよく機能するような変更により生じる派生物などの作成)、(公衆)送信、出版、公演、(公開)表示、および配布を行うための全世界的なライセンスを付与することになります。このライセンスでユーザーが付与する権利は、Google のサービスの運営、プロモーション、改善、および新しいサービスの開発に目的が限定されます。このライセンスは、ユーザーがコンテンツを削除しない限り、ユーザーが本サービスの利用を停止した場合でも、有効に存続するものとします。」という条項がとっても気になる。
 2020年3月31日の改訂でなくなっていました。

  Google ドライブでは、ユーザーがコンテンツをアップロード、提出、保存、送信、受信することができます。Google 利用規約で説明されているとおり、ユーザーのコンテンツはユーザーに帰属します。Google は、ユーザーがドライブ アカウントでアップロード、共有、保存しているテキスト、データ、情報、ファイルなどのいかなるコンテンツの所有権も請求しません。Google 利用規約は、ユーザーがドキュメントを共有したり別のデバイスで開いたりする機能を Google が提供できるよう、Google ドライブ サービスの運営と改善を目的とする限定的なライセンスを Google に付与するものです。

 なお、準拠法はカリフォルニア法。

 ※有料版のG-Suiteはまた別の規約が適用されるようです。
https://gsuite.google.co.jp/intl/ja/terms/premier_terms_prepay.html

5 Dropbox

https://www.dropbox.com/privacy#terms

 2020年1月に改訂されていましたが,やはりデータプライバシーについてはよくわかりませんでした。

 準拠法は、カリフォルニア州。

6 選外

 無料のもの(通常のGoogle Driveも含む)
 → 無料なので守秘義務に関する条項がない事が多いため

 Airtable
 → 英語のため、利用規約の精査が面倒だった。申し訳ない。

まとめ

 というわけで、有料版であればいずれも大丈夫そうですが,おすすめはセキュリティが万全なBoxです。

 オンラインストレージを検討される際には、ぜひ参考にされてください。

自前で作る(R1.11.15 追記)

最近,自前でクラウドストレージを作るという方法を見つけました。ドロップボックスっぽいインターフェースで使えるものもあるので,それほどセキュリティにこだわらなくていいならこれらも候補にできそうですね。レンタルサーバーでも構築できそうですし。

 ①ネクストクラウド  https://nextcloud.com/

 ②オウンクラウド  https://owncloud.org/