はじめに

 先日、2023年度九弁連巡回型研修(長崎)「リアル版 裁判官!当職そこが知りたかったのです。」に若手枠?パネリストとして参加してきました。同研修会では、岡口基一判事、中村真先生、原章夫先生と一緒にいろいろと話をさせていただいたのですが、特に控訴についてはあまり書籍に書いていないところなのかなと思いましたので、メモをもとにまとめてみました。

いい控訴理由書とは?

Q どういう控訴理由書を書いたら控訴審裁判官に響きますか?

A 控訴審の裁判官は、控訴理由書を読む前に控訴状と原判決を見てしまう。なので、控訴理由書では原判決を読んでとられた心証を崩さないといけない。そこで、記録をどういうふうに読めばいいかということを書くといいように思う。
 たとえば、①原審裁判官は記録のこんなところすら読んでないということや、②原判決は相手方代理人の主張にのっかっているだけであるということ、➂記録にこういう問題があるということなど。

Q 逆に、いい控訴答弁書とは?

A 控訴審裁判官もとても多忙なので、基本的に控訴棄却・原審維持で書きたい。控訴理由書を排斥できる理由を書いてくれるとありがたい。

感想:民事の控訴審は続審とされていますが、実際は事後審的な運用がなされているので、第一審の判決の当否について議論するのが大事なようです。

その他のメモ

・ 証拠は早く出すのが大事。重要な証拠の提出が遅くなってしまった場合はその経緯について説明した方が良い
・ ストーリーは立証の話なので、陳述書で書いてくれればいい。主張書面は要件事実で書いて欲しい。
・ 訴状等では当事者の顔が見えるようにして欲しい(性別・年齢など)。ここが見えないと、どんな経験則を適用すべきかわからないので、はやい段階で当事者のひととなりを知りたい。
・ 攻撃的な表現は裁判官も困る。和解ができなくなる。
・ 忙しい裁判官は証拠は見ないと思った方がいいが、証拠説明書はきちんとみてるので、ここで裁判官に証拠の価値を伝える。
・ 裁判官は忙しすぎるのでいかに読んでもらうかという工夫が大事。書面はしっかり読めという教育を受けているが、証拠についてはそういう教育がなされていないので、証拠は見ないくらいに思っていた方が良い。抜粋を作るなどして見てもらう工夫をした方がいい。
・ 脚注は主張として扱われないかもしれない。
・ キャリアシステムでは未成熟な裁判官もいるのが前提となっている。
・ 裁判官は基本的に書面を出して欲しくない。増えると読まないといけないものが増えるので。