Accusare nemo se debet,nisi coram Deo.
誰も、神のまえ以外では、自身を告発する義務を負わない。(柴田光蔵ほか『ラテン語法格言辞典』〈31〉)

 「自分に不利なことは言わなくていいですよ」ということを示す格言ですが、現在の民事訴訟法や刑事訴訟法においても、証言拒絶権として残っています。
 たとえば、刑事訴訟法146条は、「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。」と定め、自分自身が刑事事件の対象となってしまいそうなことについては証言を拒むことができるとしています。
 また、民事訴訟ではさらに拡張され、証人本人だけでなく、その配偶者や被後見人、親族等が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときや、これらの者の名誉を害する事項に関するとき、証人は、証言を拒むことができるとされています(民事訴訟法196条)。

Quod per jocum fit,non est sinistre interpretandum.
冗談でなされることは、不利に解釈されるべきではない。(柴田光蔵ほか『ラテン語法格言辞典』〈2698〉)

 「冗談を真に受けてもダメですよ」、ということなのでしょうが、現在の民法では、「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。」(民法93条1項本文)、つまり、冗談であっても原則として有効になります。
 冗談だったから無効です!ということを裁判官に認めてもらうためには、冗談を言った側で相手方が冗談であることを知っていた(悪意)か、少なくとも冗談であることを知ることができたこと(有過失)であることを主張立証する必要がありますので(同ただし書)、冗談をいうのもほどほどに。