1 情報取得手続がはじまった

 4月1日から施行された民事執行法の改正により,確定した判決等を取得している場合,銀行等に対して,裁判所を通じて情報提供を求めることができるようになりました(これを,第三者からの情報取得手続といいます。詳細は以下のURLを参照してください ※ただし東京地裁のものです。)。

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/dai3shajyouhoushutoku/index.html

2 使い勝手は?

 さっそくやったろうと思っていろいろ調べたのですが,以下のような特徴がある手続であり,思ったほど使いやすいものではないかもしれません。

①裁判所が預貯金すべてを勝手に調べてくれるわけではなく,申立側で調査する銀行を特定する必要がある(ただし支店は特定しなくてもよい)
費用もそれなりにかかる(予納金5000円+追加1行あたり4000円,返信用のレタパが調査対象の数だけ必要 ※東京地裁の場合)
③書類を集める手間がかかる(執行のときに必要な書類+債務者住所の登記簿などが必要)
④情報提供があってから1月後には債務者にも財産情報が提供された旨の通知が行ってしまう

3 今後について

 ということで,現時点では,個別に弁護士会照会で調査した方がいいという場面もありそうですが,この手続ができたことで,各銀行が従前のように弁護士会照会に応じてくれなくなる→情報取得手続が判決後のスタンダードな手続になるということもありえますので,今後の動向を注視していく必要があります。

4 R2.4.6追記

 連絡があり,長崎の場合は,
①レタパは不要だが,郵券が必要(第三者3つで4232円)
②予納金は2000円×第三者数
とのことでした。

 なので,第三者が3つの場合にかかるコストは,
ア 東京地裁
 予納金13000円+レタパ代1110円=1万4110円
イ 長崎地裁
 予納金6000円+郵券4232円=1万0232円
となります。

 追記 郵券の計算方法(長崎,R2.5.28)
  ・基本の組(460×1 + 94×1 +84×1)小計638円
  ・第三者の数に応じて増える組(575×Q + 529×Q +94×Q)
                        小計1198円×Q
  例1 第三者3つの場合 638 + 1198 × 3 = 4232円
  例2 第三者5つの場合 638 + 1198 × 5 = 6628円
  なお,提出先は債権執行係

  ・1件あたりのコストの推移
   第三者1つ 印紙1000円+予納金2000円+郵券1836円 =4836円
         1件あたり4836円
   第三者2つ 印紙1000円+予納金4000円+郵券3034円 =8034円
         1件あたり4017円
   第三者3つ 印紙1000円+予納金6000円+郵券4232円 =11232円
         1件あたり3744円
   第三者4つ 印紙1000円+予納金8000円+郵券5430円 =14430円
         1件あたり3607.5円
   第三者5つ 印紙1000円+予納金10000円+郵券6628円 =17628円
         1件あたり3525.6円
※予納金と印紙代が固定で発生するため,第三者の数が増えるほど第三者1件あたりのコストが減少していく。が,固定の費用が1638円と少額なので,それほど減少しない。

 弁護士会照会の費用が(長崎の場合)1件あたり約4400円なので,第三者が2件以上の場合,コスト面では情報取得手続の方が有利になりそうですね。