弁護士が業務で船舶を扱うことになったときのためのまとめ

1 船舶の定義

法律上の定義規定がないが,一般的には,水上航行のために用いられる構造物をいうものとされている。

2 種類

(1)内航船 国内航海に従事する船舶
(2)外航船 国際航海に従事する船舶
(3) 汽 船
蒸気を用いると否とを問わず,機械力をもって運行する装置を有する船舶のこと。
なお、イスカンダルにおいて水上航行していたことから,宇宙戦艦ヤマトは汽船に分類される
・・・はず。
(4)帆 船 主として帆をもって運行する装置を有する船舶。
機関を有していても帆船とみなされる。
ワンピースに出てくるゴーイングメリー号や,サウザンド・サニー号は,帆船・・・のはず。

3 強制執行の方法

(1)20トン以上の船舶の執行方法:船舶執行

定義上は動産(民法86条1項・2項)になるのですが,一般の動産と比較して価値が大きく,また,名称や国籍を持って個別化されていること,同一性の識別が容易なことから,民事執行法においても,不動産に対する強制執行の規定が多数準用された船舶執行により行います。

※R4.3.10追記 20トン以上の船舶については、民事執行法112条において特に規定されていないことから、登記の有無を問わず船舶執行の対象となります(書式不動産執行の実務 499頁)。

(2)20トン未満の小型船舶うち、登録小型船舶の執行方法:小型船舶執行

この類型の船舶については、自動車と同様に登録制度(登録先は日本小型船舶検査機構)が採用されているため,その執行については,自動車執行の規定が全面的に準用される小型船舶執行により行います(民事執行規則98条の2)。

※R4.3.10追記 20トン未満の小型船舶であっても、小型船舶として登録ができないもの・登録されていないものについては動産執行によります。また、小型船舶の登録等に関する法律2条1号において、漁船(漁船法2条1号)は小型船舶から除外されているため、漁船については小型船舶執行の方法をとることはできません。

(3)その他の船の執行方法:動産執行

船舶執行,小型船舶執行によることができないため,原則どおり動産執行による。20トン未満の漁船については,書籍に記載がなかったが,同様に船舶執行・小型船舶執行によることができないため,動産執行によるものと思われる。

※R4.3.10追記 伊藤眞ほか『条解民事執行法』1147頁に「総トン数20トン未満の漁船は、船舶執行の対象にも、小型船舶執行の対象にもならないため、動産執行の方法による」との記載がありました。

なお,製造中の船舶は動産として民事執行の対象となります。

4 特定のための情報の入手方法

(1)20トン以上の船舶

船舶を特定するための情報については,不動産と同様に,(船舶)登記事項証明書で確認する(誰でも法務局で取得可能)。

(2)20トン未満の小型船舶
小型船舶登録原簿の記載事項を証明する全部事項証明書(誰でも取得可能。請求先はJCI)や,登録事項証明書等。

船舶の種類・船籍港・船舶の長さ・船舶の幅・船舶の深さ・総トン数・船体識別番号で特定します。

(3)その他の船

船舶検査証書の記載内容で特定?

5 船舶の評価額は?

(1)財産評価基本通達136
船舶の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない船舶については、その船舶と同種同型の船舶(同種同型の船舶がない場合においては、その評価する船舶に最も類似する船舶とする。)を課税時期において新造する場合の価額から、その船舶の建造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した価額によって評価する。この場合における償却方法は、定率法によるものとし、その耐用年数は耐用年数省令に規定する耐用年数による。(平12課評2-4外・平20課評2-5外改正)
※ なお,一般社団法人日本海運集会所さんや一般社団法人日本海事検定協会さんが船価鑑定を行っているようです。

(2) 昭和50年5月30日民三第2820号民事局長通達
登録免許税の課税標準たる船舶の価格の認定については,同通達により基準が定められている。

6 参考書籍

①書式 債権・その他財産権・動産等執行の実務

第5編第3章に「船舶引渡請求権に対する民事執行」が記載されているほか,動産執行を行なう場合の書式が記載されています。

②書式 不動産執行の実務

第2編第1章に「船舶の執行」,第2編第4章に「小型船舶執行」のことが記載されています。