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平成28年海事代理士試験 海上交通安全法の解説

注:執筆当時の法令に基づくものです。法改正の影響については各自ご確認ください。

1.東京湾以外に、海上交通安全法が適用される海域を下欄の語群から2つ選び、その番号を解答欄に記入せよ。(2点)

答え : 伊勢湾・瀬戸内海

→ 根拠法令は、法1条2項柱書。

(1条2項)この法律は、東京湾、伊勢湾(伊勢湾の湾口に接する海域及び三河湾のうち伊勢湾に接する海域を含む。)及び瀬戸内海のうち次の各号に掲げる海域以外の海域に適用するものとし、これらの海域と他の海域(次の各号に掲げる海域を除く。)との境界は、政令で定める。


2.海上交通安全法に関する次の文章中、□内に入る適切な語句又は数字を下
欄の語群から選び、その番号を解答欄に記入せよ。(6点)
(1) 巨大船とは、[長さ200メートル]以上の船舶をいう。

→ 根拠法令は、法2条2項2号。

(2条2項2号) 巨大船 長さ二百メートル以上の船舶をいう。


(2) 航路を航行する義務のある船舶は、[長さ50メートル]以上の船舶である。

→ 根拠法令は、施行規則3条。

(施行規則3条) 長さが五十メートル以上の船舶は、別表第一各号の中欄に掲げるイの地点とロの地点との間を航行しようとするとき(同表第四号、第五号及び第十二号から第十七号までの中欄に掲げるイの地点とロの地点との間を航行しようとする場合にあつては、当該イの地点から当該ロの地点の方向に航行しようとするときに限る。)は、当該各号の下欄に掲げる航路の区間をこれに沿つて航行しなければならない。ただし、海洋の調査その他の用務を行なうための船舶で法第四条 本文の規定による交通方法に従わないで航行することがやむを得ないと当該用務が行なわれる海域を管轄する海上保安部の長が認めたものが航行しようとするとき、又は同条 ただし書に該当するときは、この限りでない。


(3) 航路を航行しようとする巨大船等の船長は、航路外から航路に入ろうとする日の[前日正午]までに、船舶の名称等を航路毎に決められた海上交通センターの長に通報しなければならない。

→ 根拠法令は、法22条及び施行規則14条1項

(法22条) 次に掲げる船舶が航路を航行しようとするときは、船長は、あらかじめ、当該船舶の名称、総トン数及び長さ、当該航路の航行予定時刻、当該船舶との連絡手段その他の国土交通省令で定める事項を海上保安庁長官に通報しなければならない。通報した事項を変更するときも、同様とする。
一  巨大船
二  巨大船以外の船舶であつて、その長さが航路ごとに国土交通省令で定める長さ以上のもの
三  危険物積載船(原油、液化石油ガスその他の国土交通省令で定める危険物を積載している船舶で総トン数が国土交通省令で定める総トン数以上のものをいう。以下同じ。)
四  船舶、いかだその他の物件を引き、又は押して航行する船舶(当該引き船の船首から当該物件の後端まで又は当該押し船の船尾から当該物件の先端までの距離が航路ごとに国土交通省令で定める距離以上となる場合に限る。)

(施行規則14条1項) 次の各号に掲げる船舶の船長は、航路外から航路に入ろうとする日(以下「航路入航予定日」という。)の前日正午までに、前条第一号から第五号までに掲げる事項及び巨大船である船舶にあつては同条第六号、危険物積載船である船舶にあつては同条第七号、物件えい航船等である船舶にあつては同条第八号に掲げる事項を通報しなければならず、航路入航予定時刻の三時間前までの間においてその通報した事項に関し変更があつたときは、当該航路入航予定時刻の三時間前にその旨を通報し、以後その通報した事項に関し変更があつたときは、直ちに、その旨を通報しなければならない。
一  巨大船
二  法第二十二条第二号 に掲げる船舶(水島航路を航行しようとする長さ七十メートル以上百六十メートル未満の船舶を除く。)
三  積載している危険物が液化ガスである総トン数二万五千トン以上の危険物積載船
四  物件えい航船等


(4) 備讃瀬戸北航路において巨大船に準じて航行に関する通報を行う船舶は、 [長さ160メートル]以上の船舶である。

→ 根拠法令は、法22条2号及び施行規則10条

(施行規則10条) 法第二十二条第二号 の国土交通省令で定める長さは、次の表の上欄に掲げる航路ごとに同表の下欄に掲げるとおりとする。
 備讃瀬戸北航路 長さ160メートル


(5) 危険物を積載していた[総トン数1000トン]以上の船舶で当該危険物を荷卸し後ガス検定を行い、火災又は爆発のおそれのないことを船長が確認していないものは、法の適用については、その危険物を積載している危険物積載船とみなす。

→根拠法令は、施行規則11条3項。

(施行規則11条3項)第一項第二号又は第三号に掲げる危険物を積載していた総トン数千トン以上の船舶で当該危険物を荷卸し後ガス検定を行い、火災又は爆発のおそれのないことを船長が確認していないものは、法の適用については、その危険物を積載している危険物積載船とみなす。


(6) 海上保安庁長官は、工事若しくは作業の実施により又は船舶の沈没等の船舶交通の障害発生により船舶交通の危険が生じ、又は生じるおそれがある海域について、[告示]により、期間を定めて、当該海域を航行することができる船舶又は時間を制限することができる。

→ 根拠法令は、法26条1項。

(26条1項)海上保安庁長官は、工事若しくは作業の実施により又は船舶の沈没等の船舶交通の障害の発生により船舶交通の危険が生じ、又は生ずるおそれがある海域について、告示により、期間を定めて、当該海域を航行することができる船舶又は時間を制限することができる。ただし、当該海域を航行することができる船舶又は時間を制限する緊急の必要がある場合において、告示により定めるいとまがないときは、他の適当な方法によることができる。


3.海上交通安全法に関する次の文章群(1)及び(2)における①及び②の正誤について、正しい組み合わせを表の1~4から選び、その番号を解答欄に記入せよ。 (2点)
(1)① 航路及びその周辺の海域において、工事又は作業をしようとする者は、海上保安庁長官の許可を受けなければならないが、「その周辺の海域」とは、航路の側方の境界線から航路の外側2海里以内の海域である。

 答え : ☓

→ 根拠法令は、法30条1項1号及び施行令7条。

(30条1項1号) 次の各号のいずれかに該当する者は、当該各号に掲げる行為について海上保安庁長官の許可を受けなければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で国土交通省令で定めるものについては、この限りでない。
一  航路又はその周辺の政令で定める海域において工事又は作業をしようとする者

(施行令7条) 法第三十条第一項第一号 の政令で定める海域は、航路の側方の境界線から航路の外側(来島海峡航路にあつては、馬島側を含む。)二百メートル以内の海域及び別表第三に掲げる海域とする。


② 航路及びその周辺の海域以外の海域において、工事又は作業をしようとする者は、海上保安庁長官に届け出なければならない。

答え : ○

→ 根拠法令は、法31条1項1号

(31条1項1号) 次の各号のいずれかに該当する者は、あらかじめ、当該各号に掲げる行為をする旨を海上保安庁長官に届け出なければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で国土交通省令で定めるものについては、この限りでない。
一  前条第一項第一号に掲げる海域以外の海域において工事又は作業をしようとする者


(2)① 航路及びその周辺の海域以外の海域において、漁具を設置しようとする者は、海上保安庁長官に届け出なければならない。

答え : ☓

→ 根拠法令は、法31条1項及び施行規則26条1号、24条2号。航路及びその周辺の海域以外の海域に関する届出義務は、法31条1項各号で定められています。このうち、漁具の設置があたりうるのは、2号の工作物の設置ですが、施行規則26条1号・24条2号により、漁具の設置は届出が不要とされています。

(31条1項) 次の各号のいずれかに該当する者は、あらかじめ、当該各号に掲げる行為をする旨を海上保安庁長官に届け出なければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で国土交通省令で定めるものについては、この限りでない。
 一  前条第一項第一号に掲げる海域以外の海域において工事又は作業をしようとする者
 二  前号に掲げる海域(港湾区域と重複している海域を除く。)において工作物の設置をしようとする者

(施行規則26条) 法第三十一条第一項 ただし書の国土交通省令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
 一  第二十四条各号に掲げる行為
 二  魚礁の設置その他漁業生産の基盤の整備又は開発を行なうために必要
  とされる行為
 三  ガス事業法 (昭和二十九年法律第五十一号)によるガス事業の用に供
  するガス工作物(海底敷設導管及びその附属設備に限る。)及び電気事業
  法 (昭和三十九年法律第百七十号)による電気事業の用に供する電気工
  作物(電線路及び取水管並びにこれらの附属設備に限る。)の設置

(施行規則24条) 法第三十条第一項 ただし書の国土交通省令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
一  人命又は船舶の急迫した危難を避けるために行なわれる仮工作物の設置その他の応急措置として必要とされる行為
二  漁具の設置その他漁業を行なうために必要とされる行為
三  海面の最高水面からの高さが六十五メートルをこえる空域における行為
四  海底下五メートルをこえる地下における行為


② 航路及びその周辺の海域において、魚礁を設置しようとする場合、海上保安庁長官の許可を受けなければならない。

答え : ○

→ 根拠法令は、法30条1項。航路及びその周辺の海域において許可が必要な行為については、法30条1項各号が規定しています。このうち、漁礁があたりうるのは、2号の工作物の設置です。そして、ただし書きの内容を定める施行規則24条においては、2号で漁具の設置等が規定されているだけで、漁礁の設置については規定がありません。
 したがって、2号の工作物の設置として、許可が必要となります。

(法30条1項) 次の各号のいずれかに該当する者は、当該各号に掲げる行為について海上保安庁長官の許可を受けなければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で国土交通省令で定めるものについては、この限りでない。
一  航路又はその周辺の政令で定める海域において工事又は作業をしようとする者
二  前号に掲げる海域(港湾区域と重複している海域を除く。)において工作物の設置(現に存する工作物の規模、形状又は位置の変更を含む。以下同じ。)をしようとする者

(施行規則24条) 法第三十条第一項 ただし書の国土交通省令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
一  人命又は船舶の急迫した危難を避けるために行なわれる仮工作物の設置その他の応急措置として必要とされる行為
二  漁具の設置その他漁業を行なうために必要とされる行為
三  海面の最高水面からの高さが六十五メートルをこえる空域における行為
四  海底下五メートルをこえる地下における行為

以 上