訴えの取り下げに対する同意を検討するにあたって
訴えの取り下げとは
民事訴訟を提起した原告は、判決が確定するまで、訴えの一部又は全部を取り下げることができます(民事訴訟法261条1項)。ただし、被告が答弁書を提出するなどして応訴した後の場合は、被告の同意がなければ訴えの取り下げの効力が生じません(同条2項本文)。
なので、応訴した後に原告が訴えを取り下げると言い出した場合、被告側はこれに同意するかどうか検討する必要が出てきます。
取り下げられた場合の効果
では、原告が訴えを取り下げると言い出した場合、被告側はどういったことを考えて同意するかどうかを決めればよいのでしょうか?
訴えが取り下げられた場合、取り下げられた部分については、はじめから訴訟がなかったことになります(262条1項)。
その結果、原告がやろうと思えばもう一度訴訟をやり直すことができます(ただし、判決を見た後でやりなおしするようなことを防ぐため、262条2項で判決がなされた後は、同じ訴訟を提起することができないようにしています。)。
したがって、訴えの取り下げに同意する場合、再度訴えを提起されるというリスクを抱えることになります。
では、同意するメリットは?
これだけを見ると、訴えの取り下げに同意するメリットがないように思えますが、訴えの取り下げにもメリットはあります。それは、そこで訴訟が終わることです。
基本的に、被告側には訴訟を継続するメリットはありません。勝っても原告から請求されないだけで、特になにかメリットがあるわけではありませんし、負けると義務が公的に認められてしまいます。
そうすると、そこで訴訟が終わり、その後対応しなくていいというのは、被告にとってはメリットだといえます。
結論
というわけで、訴えの取り下げに同意することには、そこで訴訟が終わり、その後対応しなくてよくなるというメリットがありますが、その後、再び訴訟が提起される可能性があるというデメリットもあります。
なので、訴えの取り下げに同意するかどうかは、①勝訴可能性と、②再訴リスクの大きさを検討して決める必要があります。
そもそも①勝訴可能性が不明なのであれば、敗訴判決をくらうリスクをとってまで判決をもらうメリットはありません。同意して訴えを終結させる方がよいでしょう。
また、勝訴可能性が高くても、②再訴リスクがそれほどないのであれば、結果的には同じ(原告から請求されないという結果)になります。結果的に同じになるのであれば、早く解決し、かつ労力がかからない方がいいでしょうから、この場合には訴えの取り下げに同意するという選択肢がでてきます。
相手方から訴えの取り下げがなされた場合には、代理人と上記2点を協議した上で同意するかどうかを検討されることをおすすめします。