1 はじめに

 以前,「弁護士は法定代理人なのか?」という記事を書きましたが,今回は代理人が代理人をたてる復代理に関するお話です。

2 どういう場合に復代理人が選任できるのか

 民法上,復代理人を選任することは認められていますが(※),代理権が生じる根拠によって復代理人を選任できる場合が異なります。
 具体的に言うと,任意代理の場合は,①本人の許諾を得たときか,②やむを得ない事由がなければ復代理人を選任することはできません(民法104条,改正による影響なし)。
 一方,法定代理の場合は,自己の責任で復代理人を選任することができます(民法105条本文,改正前106条本文)。

 もっとも,実務上はボス弁がなんらかの事情により期日に出頭できなくなった場合にイソ弁が

※ 代理人がさらに他人を代理人と定めて代理をさせることを「復代理」といいます。
  ただし,復代理人は,代理人を代理するのではなく,あくまで本人を代理します。
  なお,本人が新たに代理人を選任した場合は,「復代理人」ではなく,「代理人」です。

3 責任の範囲について

(1)債権法改正前

 債権法改正前は,任意代理人が復代理人を選任する場合と法定代理人が復代理人を選任する場合とで,責任を負う範囲はそれほど異なりませんでした。

 具体的にいうと,任意代理の場合,代理人が復代理人を選任したときは,
【原則】その選任及び監督について本人に対してその責任を負う(改正前105条1項)
【例外】しかし,本人の指名にしたがって復代理人を選任したときは選任及び監督の責任を負わない(同条2項本文)
【例外の例外】もっとも,復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながらその旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときはこの限りでない=原則にもどる(同条2項ただし書)。
と,ちょっと複雑ですが,原則としてその選任及び監督についてのみ責任を負うこととされていました。

 一方,法定代理の場合,債権法改正前は,やむを得ない事由があるときは,本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負うとされていました(改正前106条・105条1項)。
【原則】自己の責任において
【例外】やむを得ない事由があるときは選任及び監督についての責任のみを負う
 このように,債権法改正前は「やむを得ない事由があるとき」については,任意代理人だろうと法定代理人だろうと,「復代理人の選任及び監督についての責任のみを負う」というのが原則でした。

(2)債権法改正後

 しかし,債権法改正の施行により,任意代理人の責任範囲が変更されました。
 具体的には,債権法改正により,任意代理人の責任に関する条項(改正前105条)が削除されました(104条)。一方で,法定代理人の責任に関する条項は,繰り上がりが生じたものの,内容面での影響はありません(105条)。
 その結果,任意代理人が「本人の許諾」や「やむを得ない事由」があって復代理人を選任したとしても,責任の範囲が「選任及び監督についての責任」に限定されなくなり,なにかあった場合は債務不履行として処理されることになりました。

 これらをまとめると,債権法改正後の復代理人の選任に関する責任は,
【原則】債務不履行として処理
【例外】復代理人を選任したのが法定代理人で,かつ,「やむを得ない事由」があったときは選任及び監督についての責任に限定される。
ということになりました。

4 まとめ

 というわけで,「弁護士は別の弁護士に頼めるか?」という問いに対する答えは,以下のようになります。

⓪そもそも自分の事件なら自由に頼める(代理)。
①任意代理の場合は,「本人の許諾」か「やむを得ない事由」があれば頼める(復代理)。
②法定代理の場合は,頼める(復代理)。
 ただし,復代理人を選任する場合は,法定代理かつ「やむを得ない事由」があるときでなければ,責任が限定されないので債務不履行責任を負う覚悟で選任する必要がある。