平成26年海事代理士試験 海商法の解説

注:執筆当時の法令に基づくものです。法改正の影響については各自ご確認ください。

1.次の文章は、商法の条文である。□に入る適切な語句を解答欄に記入せよ。(5点)


(1) 本法ニ於テ船舶トハ[商行為]ヲ為ス目的ヲ以テ航海ノ用ニ供スルモノヲ謂フ

→ 根拠法令は,商法684条1項。

(684条)本法ニ於テ船舶トハ商行為ヲ為ス目的ヲ以テ航海ノ用ニ供スルモノヲ謂フ(本法において,船舶とは商行為をなす目的をもって航海の用に供するものをいう)


(2) 船舶所有権ノ移転ハ其登記ヲ為シ且[船舶国籍証書]ニ之ヲ記載スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

→ 根拠法令は,商法687条。

(商法687条)船舶所有権ノ移転ハ其登記ヲ為シ且船舶国籍証書ニ之ヲ記載スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス(船舶所有権の移転はその登記をなしかつ船舶国籍証書にこれを記載するにあらざればこれをもって第三者に対抗することを得ず)


(3) 船長ハ航海中最モ[利害関係人]ノ利益ニ適スヘキ方法ニ依リテ積荷ノ処分ヲ為スコトヲ要ス

→ 根拠法令は,商法712条1項。

(712条1項) 船長ハ航海中最モ利害関係人ノ利益ニ適スヘキ方法ニ依リテ積荷ノ処分ヲ為スコトヲ要ス(船長は航海中最も利害関係人の利益に適すべき方法によりて積荷の処分をなすことを要す)


(4) 法令ニ違反シ又ハ契約ニ依ラスシテ船積シタル運送品ハ船長ニ於テ何時ニテモ之ヲ陸揚シ、若シ船舶又ハ積荷ニ危害ヲ及ホス虞アルトキハ之ヲ放棄スルコトヲ得但船長カ之ヲ運送スルトキハ其船積ノ地及ヒ時ニ於ケル同種ノ運送品ノ[最高の運送賃]ヲ請求スルコトヲ得

→ 根拠法令は,商法740条1項。

(740条1項) 法令ニ違反シ又ハ契約ニ依ラスシテ船積シタル運送品ハ船長ニ於テ何時ニテモ之ヲ陸揚シ、若シ船舶又ハ積荷ニ危害ヲ及ホス虞アルトキハ之ヲ放棄スルコトヲ得但船長カ之ヲ運送スルトキハ其船積ノ地及ヒ時ニ於ケル同種ノ運送品ノ最高ノ運送賃ヲ請求スルコトヲ得(法令に違反し又は契約によらずして船積したる運送品は船長において何時にてもこれを陸揚し,もし船舶又は積荷に危害を及ぼすおそれあるときはこれを放棄することをう ただし船長がこれを運送するときはその船積の地及び時における同種の運送品の最高の運送亭を請求することをう)


(5) 船長カ船舶及ヒ積荷ヲシテ共同ノ危険ヲ免レシムル為メ船舶又ハ積荷ニ付キ為シタル処分ニ因リテ生シタル損害及ヒ費用ハ之ヲ[共同海損]トス

→ 根拠法令は,商法788条1項。

(788条1項) 船長カ船舶及ヒ積荷ヲシテ共同ノ危険ヲ免レシムル為メ船舶又ハ積荷ニ付キ為シタル処分ニ因リテ生シタル損害及ヒ費用ハ之ヲ共同海損トス(船長が船舶及び積荷をして共同の危険をまぬがれしむるため船舶または積荷につきなしたる処分によりて生じたる損害及び費用はこれを共同海損とす)


2.法令の規定を参照した次のア~オについて、正しい場合は○を、誤っている場合は×を、解答欄に記入せよ。(5点)


ア. 船舶管理人は、帳簿を備え、これに船舶の利用に関する事項を記載しなければならないこととなっているが、記載しなければならない事項は、重要な事項であり、全ての事項ではない。

答え : ☓

→ 根拠法令は,商法701条1項。

(701条1項)  船舶管理人ハ特ニ帳簿ヲ備ヘ之ニ船舶ノ利用ニ関スル一切ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス(船舶管理人は特に帳簿を備えこれに船舶の利用に関する一切の事項を記載することを要す)

イ. 船舶所有者は、船長以外の者に船長に代わり船荷証券を交付することを委任できる。

答え : ○

→ 根拠法令は,商法768条

(768条)船舶所有者ハ船長以外ノ者ニ船長ニ代ハリテ船荷証券ヲ交付スルコトヲ委任スルコトヲ得(船舶所有者は,船長以外の者に船長にかわりて船荷証券を交付することを委任することをう)


ウ. 船舶又は積荷が海難に遭遇した場合において、義務のない者が救助した場合、その結果に対し救助料を請求することができるが、救助料は、特約の有無に関わらず、実際に救助に要した額を超えて請求することはできない。

答え : ☓

→ 根拠法令は,商法800条及び803条1項。

(800条)船舶又ハ積荷ノ全部又ハ一部カ海難ニ遭遇セル場合ニ於テ義務ナクシテ之ヲ救助シタル者ハ其結果ニ対シテ相当ノ救助料ヲ請求スルコトヲ得(船舶又は積荷の全部または一部が海難に遭遇せる場合において義務なくしてこれを救助したる者は,その結果に対して相当の救助料を請求することをう)

(803条1項) 救助料ノ額ハ特約ナキトキハ救助セラレタル物ノ価額ニ超ユルコトヲ得ス(救助料の額は,特約なきときは救助せられたる物の価格に超ゆることをえず)


エ. 海上保険契約は、航海に関する事故により生じる損害の補填を目的とするものであるが、商法に別段の定めがある場合を除き、保険業法の規定が適用されることとなっている。

答え : ☓

→ 根拠法令は,商法815条。保険業法ではなく,保険法です。

(815条) 海上保険契約ハ航海ニ関スル事故ニ因リテ生スルコトアルヘキ損害ノ填補ヲ以テ其目的トス(海上保険契約は,航海に関する事故によりて生ずることあるべき損害の填補をもってその目的とす)

2 海上保険契約ニハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外保険法 (平成二十年法律第五十六号)第二章第一節 乃至第四節 及ビ第六節 並ニ第五章 ノ規定ヲ適用ス(海上保険契約には本章に別段の定めある場合を除くほか,保険法第2章第1節ないし第4節及び第6節ならびに第5章の規定を適用す)


オ. 全ての乗船切符は他人に譲渡することができない。

答え : ☓

→ 根拠法令は,商法777条。譲渡できないのは,記名のものだけです。

(777条)  記名ノ乗船切符ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得ス(記名の乗船きっぷはこれを他人に譲渡することをえず)

以 上