1 はじめに
以前からご紹介していた遺言書保管制度が,令和2年7月10日からスタートしました。せっかくなので実際に保管申請をしてみた雑感を残しておきます。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
2 本籍地の記載のある住民票の取得
この制度を利用する場合の流れについては,「03遺言者の手続」に記載があります。この記載にしたがうと,まずは遺言書の作成からにスタートすることになるのですが,効率的に作成するという観点からすれば,まずは市役所等に行って本籍地の記載のある住民票を取得するのがおすすめです。
後で住民票を取得する場合,作成した書類と齟齬があると書き直さなければならなくなってしまいます。
3 自筆証書遺言を作る。
次に,法務省のサイトの「06 自筆証書遺言の様式について」から,注意事項と様式を印刷しましょう。住所などは,先に取得しておいた住民票の記載と異なることがないように記載します(法務局でも,記載に齟齬がないか確認されます。)。
また,遺言書が複数枚にわたる場合でも,ホチキス止めは不要です。また,封筒にいれる必要もありません。むしろこの辺をやっていると窓口で面倒なことになります。多分。
なお,法務省のサイトの記載例では付言がありませんが,特に指摘されることなく預かってもらえましたので,付言を記載することも可能です。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00057.html
4 申請書を作成する
次に,保管申請書を作成します。直接入力することができるPDFになっていますが,環境によっては表示と印刷がずれてしまうので,印刷して手書きしたほうがいいかもしれません。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00048.html
なお,遺言を預けていることを家族が知らなかったり,知っていても忘れていた場合,遺言書を保管している意味がなくなってしまいますので,死亡時の通知は希望しておいたほうがいいと思います(法務局でも確認されました。作成して持って行っていたんですけど。)。
5 法務局に予約を入れる
保管申請する場所を決めて,予約をします。変更の届出等を行う可能性があることを考えると,家から近いところが便利かもしれませんね。
予約が入るまでに少し間が空きますので, 保管証が早急に必要になる場合ってあまり考えられませんが, 余裕をもって予約を入れるようにしましょう。ちなみに,私は7月16日の午後4時ころ電話して21日の朝に予約がとれました。
6 法務局に行く
長崎地方法務局の場合,3階供託課が担当窓口になっています。住民票と運転免許証等の本人確認書類を忘れずに持って行きましょう。なお,申請書については法務局にも備付けのものがありますので,忘れても現地で書けばなんとかなりそうです。
なお,収入印紙(3900円)については,2階で買えますので事前に購入しておく必要はありません。予約をする際にも,「預かれることを確認してから印紙を購入していただきます」というアナウンスがありましたし,当日も,「預かれるか決済がおりたら買ってもらいます」といわれていました。
7 保管証を受け取る
無事手続が終わり,しばらく待っていると,保管証をくれます。私の場合は,9時25分ころに行って10時5分ころに保管証がもらえましたので,約40分くらいかかりました。余裕をもって1時間くらいかかるものと思っていた方がよさそうです。
なお,印紙を買いにいったり,パンフレットを使って生きている間にできる手続や死亡後に相続人ができる手続などについても説明してくれましたので,実質的な待ち時間はそれほどありません。
保管証は,再発行不可なので,複数の相続人に渡したいときにはコピーを活用する必要があります。遺言書の内容等は記載されていません。
8 まとめ
印紙が3900円必要になりますが,きちんと遺言書を保管してくれて,しかも死亡時に希望する人に通知してくれるので,わりといい制度なのではないでしょうか。時間のかかる検認も不要になりますし。
ただ,自筆証書遺言の場合は,どうしても無効になるリスク等がありますので,ちょっとでも複雑なものを作成するときは,できれば公正証書遺言にしていただきたいところです。
気になる点としては,申請をした後,ちょいちょい窓口の人と決済をする人が奥に引っ込んで談笑していることがありました(たぶん付言にいろいろ余計なことを書いたからだと思います笑)。一般の人からすると,「内容のことで笑われているのではないか」と不安になりそうなので,あの運用はやめていただきたいところです。