平成27年海事代理士試験 海商法の解説

1.商法の条文を参照した(1)~(5)の各文章について、正しいものに○、誤っているものに×を付した場合の組合せを、下欄の1~4の選択肢から選び、解答欄に記入せよ。

(1) ア. 航海中の船舶の所有権を譲渡した場合は、原則として、その航海により生じた損益は譲受人に帰するが、特約がある場合においてはこの限りではない。

答え : ○

→ 根拠法令は、商法688条。
所有権が移転するので、果実的な「公開により生じた損益」につい
ても原則として移転するようになっています。

(688条) 航海中ニ在ル船舶ノ所有権ヲ譲渡シタル場合ニ於テ特約ナキトキハ其航海ニ因リテ生スル損益ハ譲受人ニ帰スヘキモノトス

(1)イ. 船舶所有者は船長その他船員がその職務を行うにあたり故意又は過失により、他人に損害を与えた場合には賠償責任が生ずる。

答え : ○

→ 根拠法令は、商法690条。
民法の使用者責任的な規定です。

第六百九十条  船舶所有者ハ船長其他ノ船員ガ其職務ヲ行フニ当タリ故意又ハ過失ニ因リテ他人ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ

(2) ア. 損益の分配は毎航海終了後に、船舶共有者の持分の価格に応じて行う。

答え : ○

→ 根拠法令は、商法697条。
船舶共有者がいる場合、航海ごとに損益を分配する仕組みになっています。

(697条) 損益ノ分配ハ毎航海ノ終ニ於テ船舶共有者ノ持分ノ価格ニ応シテ之ヲ為ス

(2)イ. 船舶共有者の間にある船舶の利用に関する事項は各共有者の持分の価格に従い、その過半数をもって決定する。

答え : ○

→ 根拠法令は、商法693条。
会社等と同じで、多数決原理により決定されます。

(693条) 船舶共有者ノ間ニ在リテハ船舶ノ利用ニ関スル事項ハ各共有者ノ持分ノ価格ニ従ヒ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス

(3) ア. 船舶所有者は何時でも船長を解任することができる。

答え : ○

→ 根拠法令は、商法721条本文。解任された船長の保護は、ただし書きで図られています。

(721条)  船舶所有者ハ何時ニテモ船長ヲ解任スルコトヲ得

(3)イ. 船長は、船舶所有者に遅滞なく航海に関する一切の事項を報告しなければならない。また、船長は、毎航海終了後に遅滞なくその航海に関する計算をし、船舶所有者の承認を求め、船舶所有者の請求のあるときは何時においても計算の報告をしなければならない。

答え : ☓

→ 根拠法令は、商法720条。一切の事項ではなく、重要な事項を報告すれば足ります。

(720条)  船長ハ遅滞ナク航海ニ関スル重要ナル事項ヲ船舶所有者ニ報告スルコトヲ要ス

 2 船長ハ毎航海ノ終ニ於テ遅滞ナク其航海ニ関スル計算ヲ為シテ船舶所有者ノ承認ヲ求メ又船舶所有者ノ請求アルトキハ何時ニテモ計算ノ報告ヲ為スコトヲ要ス

(4) ア. 船舶所有者は、所有する全ての船舶について、特別法の定めに従い登記し、かつ、船舶国籍証書の交付を受けなければならない。

答え : ☓

→ 根拠法令は、商法686条2項。20トン未満の船舶については、例外となっています。

(686条)  船舶所有者ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ登記ヲ為シ且船舶国籍証書ヲ請受クルコトヲ要ス

2 前項ノ規定ハ総噸数二十噸未満ノ船舶ニハ之ヲ適用セス

(4)イ. 船舶所有者は、旅客が契約により船内に持ち込むことができる手荷物については、特約の有無に関わらず、別途運送賃を請求することはできない。

答え : ☓

→ 根拠法令は、商法779条。特約があれば請求することが可能です。

(779条)  旅客カ契約ニ依リ船中ニ携帯スルコトヲ得ル手荷物ニ付テハ船舶所有者ハ特約アルニ非サレハ別ニ運送賃ヲ請求スルコトヲ得ス

(5) ア. 共同海損又は船舶の衝突により生じた債権は1年を経過した場合は時効により消滅する。この期間は、船舶の衝突についてはその計算終了の時より起算する。

答え : ☓

→ 根拠法令は、商法798条2項。計算終了時から起算するのは共同海損。船舶の衝突の場合は、すぐに請求できることが前提となっています。

(798条) 共同海損又ハ船舶ノ衝突ニ因リテ生シタル債権ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス

2  前項ノ期間ハ共同海損ニ付テハ其計算終了ノ時ヨリ之ヲ起算ス

(5)イ. 船舶債権者の先取特権と他の先取特権が競合する場合においては、船舶債権者の先取特権が優先される。

答え : ○

→ 根拠法令は、商法845条。

(845条)  船舶債権者ノ先取特権ト他ノ先取特権ト競合スル場合ニ於テハ船舶債権者ノ先取特権ハ他ノ先取特権ニ先ツ

2.次の文章は商法の条文である。 に入る適切な語句を、下欄の語群の中から選び、その記号を解答欄に記入せよ。

(1)発航前ニ於テハ傭船者ハ運送賃ノ[半額]ヲ支払ヒテ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得

→ 根拠法令は、商法745条1項。
手付金的な感じで、発航前であれば、半額を支払うことで契約を解
除することができます。

(2)保険者カ委付ヲ承認セサルトキハ被保険者ハ委付ノ原因ヲ証明シタル後ニ非サレハ[保険金額]ノ支払ヲ請求スルコトヲ得ス

→ 根拠法令は、商法841条。

(3)船舶ノ存否カ[六カ月]間分明ナラサルトキハ其船舶ハ行方ノ知レサルモノトス

→ 根拠法令は、商法834条1項。
失踪宣告的なもので、6ヶ月間船がどこにあるか不明になった場合
は行方知れずとして扱います。

(4)海難ニ際シ契約ヲ以テ救助料ヲ定メタル場合ニ於テ其額カ著シク不相応ナルトキハ[当事者]ハ其増加又ハ減少ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ前条ノ規定ヲ準用ス

→ 根拠法令は、商法802条。
一応救助料を定めることができるのですが、緊急事態のため、どん
な条件を出せばいいかわからなかったり、過大な請求であっても飲ん
でしまいがちです。そこで、あまりに不相当な場合には、事後的に増
減額ができると定められています。

(5)傭船者又ハ荷送人ハ船長又ハ之ニ代ハル者ノ請求ニ因リ[船荷証券]ノ謄本ニ署名シテ之ヲ交付スルコトヲ要ス

→ 根拠法令は、商法770条。
これは、傭船者や荷送人側の義務です。

              以 上