1 和議って何?

 和議とは,和議法に基づき破産の予防を目的としてなされていた手続です。

 平成12年の民事再生法の施行に伴い,和議法が廃止されたことにより,現在では行われていません。

2 和議の登記が残ってる?

 前述のとおり,現在では和議の手続きがなされることがないので、その登記がなされることもないのですが、和議法の廃止前になされた和議開始・和議認可の登記が抹消されずに残っていることがあります。

 この場合、登記が入っている不動産を担保に入れられない等の不都合が生じるので,「この登記を抹消したい!」ということになるわけですが,問題は、まず和議法が廃止されているということです。

 この場合,何を根拠法令にして登記の抹消を求めるんだ・・・

3 とりあえず民事再生法の附則を漁る

 すでに,和議法が民事再生法の施行に伴い廃止されていることがわかっているので,とりあえず民事再生法の附則を漁ってみます。 

(和議法の廃止に伴う経過措置)
第3条 この法律の施行前にされた和議開始の申立てに係る和議事件については、なお従前の例による。この場合におけるこの法律の規定の適用については、第十一条第六項、第九十三条第二号及び第四号並びに第百二十七条第一項第二号中「整理開始」とあるのは「和議開始、整理開始」と、第十六条第二項第一号中「又は詐欺破産」とあるのは「若しくは和議手続における和議開始の申立て又は詐欺破産」と、第二十五条第二号、第二十六条第一項第一号及び第三十九条第一項中「整理手続」とあるのは「和議手続、整理手続」とする。

 この「なお従前の例による」,というのは,「廃止前の法令自体は失効しているけど,この規定が適用の根拠となって,以前の法令が適用される」ということです。そして和議法へ。

4 もともと明文の規定がないやんけ

 というわけで,和議法の条文を検索してみました(ちなみに,もう廃止されている法令なので,e-Govちゃんでは出てこなかった。ありがとう愛大六法条文データ一覧。)が,和議認可決定等の登記の抹消に関する条文がありません。というか,「登記」に関する条文が8条と9条にしかない。どうしてこうなった。

5 しかし、文献と通達があるぞ!

 そこで,和議法に関する書籍を4冊ほど借りてきて調査したところ,「破産法和議法実務総欖 石原辰次郎 著」の804頁以下に記載がありました。

 やはり他の手続と異なり,和議開始や和議認可の登記を抹消すべき明文の規定はなかったようです。
 しかし,和議申立人が,和議裁判所に対し,抹消登記の嘱託の申請をした場合については、「和議認可の登記がされている場合の和議に関する登記の抹消登記の嘱託について(昭和37年10月16日最高裁民二第504号民事局長通知)」という最高裁通知があり、和議裁判所が抹消登記の嘱託をする(この際,登記原因や日付の記載は不要)と受理されるという扱いになっているということが判明しました。

6 まとめ

 というわけで,「和議開始や和議認可の登記」を抹消したいんです,という相談が来たら,まずは和議裁判所を確認して,抹消登記手続の嘱託の申請ができないか打診してみるという方法をとってみてはいかがでしょうか。