平成30年海事代理士 憲法の解説

1. 次の文章は日本国憲法の条文である。【  】に入る適切な語句を解答欄に記入せよ。(5点)

(1) 【信教の自由】は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

→ 根拠法令は、憲法20条1項。条文そのままの出題です。

(2) 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、【内閣】でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。

→ 根拠法令は、憲法80条1項。条文そのままの出題です。
このあたりは、最高裁判所と下級裁判所とで対比しておくと覚えておきやす
いですよ。

(3) 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、【国会の議決】に基くことを必要とする。

→ 根拠法令は、憲法85条。条文そのままの出題です。

(4) この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に【公共の福祉】のためにこれを利用する責任を負ふ。

→ 根拠法令は、憲法12条。条文そのままの出題です。

(5) 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の【三分の二以上】の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

→ 根拠法令は、憲法57条1項。条文そのままの出題です。

2. 日本国憲法及び判例を参照した次の(ア)~(オ)について、正しい場合は○を、誤っている場合は×を、解答欄に記入せよ。(5点)

(ア) 条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによってこれを決しなければならない。

答え:○

根拠条文 なし

根拠判例 最高裁昭和50年9月10日大法廷判決(徳島市公安条例事件)

(イ) 信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断は法令の適用によって終局的な解決が可能であるので、裁判所法第三条にいう法律上の争訟にあたる。

答え: ☓

根拠条文 裁判所法3条

根拠判例 最高裁昭和56年4月7日第三小法廷判決(板まんだら事件)
判例は、信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断が訴訟の主張立証の核心となっている事案について、実質において法令の適用による終局的な解決が不可能と判断しています。
つまり、本選択肢は、「法令の適用によって終局的な解決が可能」という点、「法律上の争訟にあたる」という点のいずれにおいても誤っています。

(ウ) 憲法第二十九条第三項にいう「公共のために用ひる」というのは、私有財産権を個人の私の利益のためにとりあげないという保障であるから、特定の個人が私有財産収用の受益者となる場合、そのような私有財産収用には公共性があるとはいえない。

答え:☓

根拠条文 憲法29条3項

根拠判例 最高裁昭和29年1月22日第二小法廷判決
自作農特別措置法に関するものですが、同法により買収された土地が特定の者に売り渡されるとしても、29条3項に違反しないとしています。

(エ) 公務員を選定罷免する権利を保障した憲法第十五条第一項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、当該規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばない。

答え:○

根拠法令 憲法15条1項

根拠判例 最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決

(オ) 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

答え:○

根拠法令は、憲法54条1項。受験生がひっかかりやすいからかよく出題されている条文です。

所感

回答の根拠 条文6:判例4

今年も条文と判例からのみ出題され、条文の比率が高いという傾向がありますので、来年度もまずは条文からマスターするのが合格点への近道だと思います。

以上