たまには法律の話も。
弁護人ががんばって活動したことによりAさんの勾留請求が却下されたとしても、検察官から準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)がなされてしまうと、通常、この準抗告に対する判断がなされるまでの間、Aさんは身柄が拘束されたままになってしまいます。
勾留請求(204条~206条)が却下されている以上、釈放の命令(207条5項)がなされているはずなのに、どうしてAさんは身柄を拘束され続けなければならないのでしょうか?
これに対する答えは、検察官が勾留に関する裁判に対して準抗告を行う際に、あわせて釈放命令の執行停止の申立てもしているからです。命令も裁判のひとつなので(43条参照)、432条が準用する424条1項ただし書き又は同条2項に基づき、原裁判所又は抗告裁判所は、決定により執行を停止することができるのです。
ちなみに、あわせて執行停止の申立てをしない場合は、証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判(429条1項4号)や身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判(同項5号)に対する取消や変更の請求ではない以上、同乗5項の執行停止(同条5項)の効力が及ばず、準抗告中であっても釈放命令を執行してAさんの身柄を解放する必要があります。・・・あわせて申立てがなされなかったというケースは聞いたことがありませんが。
なお、検察官による準抗告が認容された場合は、弁護人による準抗告がとおらなかった場合と同様、当該決定については不服を申立てることができないので、特別抗告(433条1項)によるほかないのですが、検察官側からの特別抗告というのも聞いたことがありません。特別抗告をするにあたっては、405条に規定する事由(憲法違反や判例違反等)が必要だからでしょうか。